神気を使った試み
師匠に許可をもらったところで、俺は自分の内にある神気を右手に集中させていく。それを眺めながら、師匠がポツリと言った。
「まさか人間を辞めていたとは……驚いたぞ柊。」
「俺も辞めたくて辞めたわけじゃないんですけど……。」
あれは不可抗力というか、好奇心で神華樹の果実を食べてしまったが故にこうなってしまった。
……まてよ?俺と同じ転生してきた人間で、神華樹の果実を食べた人はもう一人いるよな。
チラリと俺は一度師匠の方へと視線を向ける。
「ん?どうしたんだ柊。」
「師匠、もしかすると……師匠ももう人間を辞めちゃってるかも。」
「私がか?はっはっは、そんなわけ無いだろう。」
愉快そうに笑っている師匠だが、可能性がないとは言い切れないのが怖いところだ。
まぁ、今はまずこれを試してみよう。
「それじゃあやってみます。」
「あぁ、思いっ切りやってくれ。」
神気を集めた右手を、師匠に繋がっている鎖へと向かって叩きつけた。
「うっ……。」
すると、師匠から苦しそうな声が漏れた。
「だ、大丈夫ですか師匠?」
「大丈夫……だ。少し心臓が揺さぶられたような……そんな感じがしただけ。」
「それは大丈夫じゃないような……それで、どうです?何か変化っていうかそういうのはありました?」
「確かに効果があるような感じはする。神華樹の果実を食べるよりも、はるかに強く私の体が拒否反応を起こしているからな。だから、もう一発今のをやってくれ。」
「……わかりました。」
一度ステータスを確認して、今の自分の神気残量を確認してみると、今の一撃で50%も使ってしまっていたようで、残りは50%のみとなっていた。
「今やれるのはもう一発だけか。」
そしてもう一度神気を右手に集めて、鎖へと手刀を振り下ろす。
「ふんっ!!」
するとバキッ……と師匠に繋がれていた鎖にヒビが入った。
「うぁっ……お、おぉ!!ヒビが入ったじゃないか!!」
大喜びする師匠の横で俺はぐったりと崩れ落ちた。
「うぇぇ……な、何もする気が起きなぃぃ。」
「お、おい柊!!大丈夫か!?」
神気を使い果たしたから、体が無気力状態になってしまっていたのだ。
「大丈夫です……ちょっと休んだら治ると思います。」
「ほ、本当に大丈夫なのか?」
結局、その後イリスの手を借りて、なんとか俺は無気力状態から復活するのだった。
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