手作りうどん


 お昼時には屋敷に帰って、みんなのお昼を作り始める。


「さて……今朝作っておいた生地はどうなってるかな〜。」


 今朝作って、常温で寝かせておいた、ある料理に使う生地をぷにぷにと触って感触を確かめる。


「うん、良い感じだ。」


 その生地を打ち粉をした台の上に乗せて、麺棒で円形に伸ばしていく。


「ここから麺棒に巻きつけながら生地を伸ばして……。」


 ここで生地の厚さを3mmぐらいに均一にする。ここで厚さが均一じゃないと、茹で時間が変わってしまうから慎重に……。


「良し、後はしっかり打ち粉をもう一回して、折りたたんで……幅を均一に切る。」


 あいにく麺を切る専用の包丁は持ってないから、普通の包丁で繋がらないように気を付けながら、幅を揃えて切っていく。


「最後に打ち粉をした分の粉をしっかりと払ってから、一人前ずつに分ける。」


 軽い打ち粉をした木の板の上に、余分な粉を落とした麺を一人前ずつ並べていく。家には大食漢が約三名程いるから、量はかなり多くなってしまった。


「ふぅ、これでひとまずは手作りうどんの完成っと。」


 今回お昼ごはんに採用したのは、うどんだ。以前きつねうどんを作った時に、手作りのうどんも作りたいと思っていたのだ。


「これは茹でる時まで冷やしておいて……その間にトッピングに使う天ぷらとか、そういうのを準備しよう。」


 今日のうどんは、みんな各々で好みのうどんを自分で作ってもらうことにした。天ぷらうどんであったり、山かけうどんであったり、きつねうどんだったり、兎に角バリエーションはたくさん用意しよう。


「じゃあまずは天ぷらからだな。」


 天ぷらには、定番の鶏天と海老天に加えて、キノコの天ぷら……後は野菜をきざんで、かき揚げにしよう。


 そして俺は、天ぷらに使う食材を切り分けて、それらに衣をたっぷりと纏わせてから、熱した油で揚げていった。


 その最中、後ろから視線を感じた。


「ん?」


 ちらっと後ろを振り返ってみると、そこにはマドゥが立っていた。


「どうかしたかマドゥ。」


「あ、えっと……その。」


 言葉に詰まっていると、マドゥのお腹から彼の言葉を代弁する音が聞こえてきた。


 ぐぅぅぅ〜……。


「あっ……。」


「ははは、なるほどな。」


 今のお腹から聞こえた音で、マドゥが何を言いたいのか良くわかった。

 俺は揚げたての鶏天にさっと塩を振って、マドゥのところに持っていく。


「ほら、味見してみるか?」


「い、いいの?」


「あぁ、その代わりシアたちには内緒だぞ?」


 コクコクと何度も頷いたマドゥの口元に、少し冷ました鶏天を近づけると、彼は一言挨拶をしてから食べた。


「い、いただきます。はむ……あ、あふっ!!」


 まだ熱かったらしくマドゥは、はふはふと口を忙しなく動かしながら食べていた。


「ご、ごめんな。ちょっと熱かったな。」


「ら、らいじょうぶ……れふ。」


 そしてマドゥはゴクン……と鶏天を飲み込むと、幸せそうな表情を浮かべていた。


「お、美味しかったぁ……あ!!ご、ごちそうさまでした。」


「美味しかったなら結構だ。後はお昼ごはんの時にめいいっぱい食べると良い。」


 ポンポンとマドゥの頭を撫でてから、俺はまた調理に戻るのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る