神気のことは女神に


 数時間、この神気闘法というものと向き合って、いくつかわかったことがある。


 まず一つ、この神気闘法というのは、攻撃をする度に大きく神気を消耗するということ。軽く放った攻撃でも神気の残量が一気に10%ぐらい減る。ちなみに今俺が出せる全力で攻撃した場合……25%も減ってしまった。


 二つ、神気の自然回復がめちゃくちゃ遅いこと。約1%の神気を回復するのに、10分程度の時間が必要だった。


 そして三つ、神気を全て消費すると魔力切れの苦しさほどではないが、無気力になってしまう。兎に角何もしたくない……そんな感じになるのだ。


 この三つを理解した上で、俺はポツリと呟いた。


「ふぅ……この神気闘法はかなり短期決戦向けだな。しかも攻撃は一発も外せない。難しいな。」


 ナルダ程の相手になれば、攻撃を一発も外さずに当て続けるというのは、かなり難しいことだ。しかも精確さを求めて、攻撃のタイミングを見計らっていては、徐々に神気の残量が減って、どちらにせよ攻撃の回数が減る。


「神気の残量をもっと増やせれば……攻撃の回数も増やせるけど、その方法がわからないんだよなぁ。」


 頭を悩ませていると、この神気というものに最も詳しいであろう人物が、ポンと頭に思い浮かんできた。


「やっぱりイリスに助言を求めるしかないな。」


 餅は餅屋に、神気のことは女神に聞くのが一番手っ取り早いだろう。


 そういうわけで、早速出てきてもらおうかな。


 俺はイリスのことを思い浮かべて、マジックバッグの中に手を突っ込んだ。すると、どうやらお菓子をつまみ食いしている最中だったらしく、どら焼きを頬張りながらイリスが姿を現した。


「あ……こ、これはその……なんといいますか。」


「あぁ、別に言い訳はいらないぞ。特に問い詰める気もないから。」


「ほっ……それは安心しました。」


 急いで彼女はどら焼きを口の中に放り込むと、俺の要件について聞いてきた。


「それで、私に聞きたいこととはなんでしょう?」


「神気のことについて聞きたいんだ。」


「なるほど、デミゴッドになったヒイラギさんなら、知りたくなるであろうと思っていました。……それで神気の何について聞きたいのでしょうか?」


「神気の最大量を増やす方法を教えてほしいんだ。」


 そう問いかけると、イリスは少し難しそうな表情を浮かべてしまう。


 何か聞いてはいけないことを聞いてしまったかな……と不安になっていたところ、次にイリスから出た答えを聞いて、俺は彼女が難しい表情を浮かべていた理由を知ることになる。


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