静葉へのご褒美


 ナルダの襲撃のあった夜……俺はいろいろな道具を師匠の幽閉されている部屋へと運んでいた。


「よいしょ……これで最後。」


「おぉ、随分準備するものが多いな。」


「だって、師匠にご褒美って言われたら……こうするしかないんですもん。」


 師匠が普段自分へのご褒美にするもの……それは、高い寿司と、高い肉だった。


「さて……じゃあどっちから食べます?お寿司か、それともお肉か。」


「ではまず寿司の方から頼もうかな。」


「わかりました。」


 師匠の目の前で寿司ネタを切りつけて、握っていく。その最中、師匠があることを問いかけてきた。


「柊、今日のネタは何だ?」


「今日用意したのは、マグロのような味わいのブラックファッティって魚と、ルビーブリム…それとジュエルサーモンを用意しました。」


「ふむふむ、当然だが一つも聞いたことのない魚の名前ばっかりだな。」


「ちなみにどれもこれも、めちゃくちゃ高いお魚ですよ。特にブラックファッティなんかは半端ないです。」


「そ、そうなのか……。」


「ま、師匠のお腹に入らなかった分は、みんなのお腹に入るので、このぐらいの出費は全然問題ないです。」


 みんなもブラックファッティのお寿司とかお刺身大好きだし、食卓に並んだらまず喜ばれるものだからな。


 そしてまずは三種類のお寿司を一貫ずつ用意して、師匠のところへと運んだ。


「師匠、まずはどれから食べます?」


「じゃあまずは、そのマグロみたいな魚から食べさせてくれ。」


「ブラックファッティですね。今回握ったのは、赤身の部分です。」


 ブラックファッティの寿司に醤油をちょんとつけて、師匠の口に近付けた。


「いただきます。あむっ!!」


 勢い良く寿司を食べようとした師匠は、勢い余って俺の指まで口の中に入れてしまう。


「師匠、早く食べたかったのはわかりますけど、俺の指まで食べないでください。」


 第一関節らへんまで入ってしまった指を引き抜くと、師匠は美味しそうに何度も咀嚼してから飲み込んだ。


「はぁ〜……確かにマグロのような味わいだった。それも高級な寿司屋で出てくる、美味いマグロに引けを取らない程美味かった。」


「美味しく食べてくれたなら何よりでした。次はどっちを食べます?」


「オススメはどっちだ?」


「個人的に好きなのは、ジュエルサーモンですね。」


「ではそっちから食べてみよう。」


 そしてジュエルサーモンとルビーブリムも味わいつくし、寿司はひとまず満足といったところで、師匠はいよいよ肉をオーダーしてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る