神気解放


 炎と雷で体が焼かれ、水に体を貫かれ、氷で体のあちこちが凍らされていく。さながら地獄のような苦しみ……。あちこちで体がボロボロになっていくのを感じた。


 永遠に続くかと思われた魔法の連撃。時間感覚をも失われてしまい、どれだけ続いたのかもわからないほど、魔法の連撃に晒されたあと、やっと俺は解放された。


「が……はっ…………。」


 全身に力が入らず、俺はそのまま地面に倒れ込んでしまう。


「ほぅ、まだ息があるか。流石の生命力だと褒めてやる。だが…………。」


 ナルダは手を翳すと、俺へと向かって魔法を放とうとしてくる。


「動けなければ、殺すことは容易い。」


 そして魔法陣が光を発した時……俺の脳内に誰かの声が聞こえてきた。


『神気を解放しますか?』


 その声が聞こえた瞬間、俺以外の周りの時間が全てピタリと静止した。


「なに……が。」


『神気を解放しますか?』


 頑なにその声は同じ問いかけを投げてくる。


「それを解放したら……アイツに勝てる……か?」


『肯定します。その代わり、死の女神の祝福技であるブレスオブディザスターは失われます。』


 新しい力を得る代わりに、死の女神の技であるブレスオブディザスターを失う。だが、それでもナルダに勝てる……。


 なら迷う必要はないな。


「解放する。」


『神気所有者からの承認を確認。開放を開始します。』


 そう声が頭の中に響くと、止まりかけていた俺の心臓がドクンと大きく脈打った。それと同時に止まっていた周りの時間も動き始める。


『神気による肉体の再生を開始………完了しました。』


「っ!!」


 体を蝕んでいた痛みが一瞬で消え去り、急に意識が覚醒する。


「なんだ?」


 俺が意識を覚醒させたことに驚いたのか、体の動きが一瞬止まる。それを見逃さず、俺は奴の腹に思い切り蹴りを叩き込んでやった。


「ぐっ……き、貴様っ。」


「ん?今のは随分効いたみたいだな。」


 ナルダは初めて俺の攻撃に苦悶の表情を浮かべた。


「くたばり損ないがっ!!」


 またしてもナルダは魔法陣も無く、突然俺の前に魔法を出現させた。しかしそれは俺の眼前でかき消されたように消えてしまう。


「なに!?」


「驚いてるところ悪いが……俺も良く分からないんだな!!」


 動きの止まったナルダに、もう一発ダメ押しに腹部に拳を叩き込む。すると、奴は口から大量に吐血した。


「ゴボォァッ!!」


 それと同時に、ナルダの頭上からカリンとリリンの二人が姿を現した。


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