ヒイラギvsナルダ②


 ナルダを飲み込んだサンダーブレスを撃ち終えると、その光線の中からシールドのようなものに包まれたナルダが平然と姿を現したのだ。


「なんだそれ……。」


「ただの防御魔法だ。ブレスを受けるぐらいならこの程度の魔法で問題ない。」


 出力最大のサンダーブレスでも、ナルダの防御魔法を貫くことはできない……か。それなら他の普通のブレスでも太刀打ちはできないだろう。


「恐らく、今のブレスが最高火力だろう?ならば早々に諦めることだな。今、大人しく引き下がるのであれば命だけは残してやる。」


「はっ……笑わせるなよ。」


 体に纏っていたサンダーブレスが徐々に赤黒く染まっていき、心の奥底からこいつに対する怒りがマグマのようにボコボコと沸いてくる。


「俺を諦めさせたいなら、二度と再起できないぐらい絶望させてみろ!!」


 未だ防御魔法を展開したままのナルダへと向かって、俺は一気に突っ込んだ。奴は相当あの防御魔法に自信があるらしく、余裕の笑みを崩さない。


 しかし、俺が奴の防御魔法に手を触れた瞬間……そんなナルダの表情が崩れると同時に、防御魔法が崩壊を始めたのだ。


「何?」


 奴が驚いていたのも束の間、ナルダの眼前に小さな黒い球体がゆっくりと迫る。


「弾けろ。」


 俺の声が掛かった瞬間、ナルダの眼前に迫っていたその黒い球体は一気に膨張し、またしてもナルダを飲み込み、大きな爆発を起こした。


 しばらくして爆発が収まると、爆発の中心地から、体の半分がごっそりと無くなったナルダが姿を現す。


「なるほどなるほど……今のがカオスドラゴンがイース様から与えられたブレスか。」


 失った半身をゆっくりと再生しながら、ナルダはこちらへと視線を向けた。


「やはり長生きはするものだ。こうして新たな経験を積めるのだからな。」


 そして体を完全に再生し終えると、ナルダはパチンと指を鳴らす。それとほぼ同時……魔法陣などの予兆もなく、俺の眼前に巨大な火球が迫っていた。


「な……。」


 全ての反応が間に合わず、俺はその火球をマトモに喰らってしまった。


「ぐうぅぅっ!!」


 龍化しているというのに、鱗の下の肉が焼かれる感覚を感じる。防御がほぼ意味をなしていない。


「たった一発で怯んでいる場合じゃないぞ。」


 そしてまたナルダが指を鳴らすと、俺の逃げ場を奪うように、四方八方に隙間無く、色々な属性を持った魔法が突然現れたのだ。


「不味……。」


 魔法に囲まれたと理解する間もなく、俺は大量の魔法に飲み込まれてしまった。

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