ヒイラギvsナルダ


 魔法陣が現れ光を放つと同時に、数多くのそれぞれ違う属性の魔法が、一気にこちらへ向かって放たれた。


「社長、頼むぞ!!」


「わかりました。」


 そしてカリンはリリンの肩に手を置くと、懐から御札のようなものを取り出して何処かへと消えた。


「ん?」


 俺を置いて二人が消えたことに、一瞬ナルダは戸惑いの表情を浮かべた。


「纏い衣……水。」


 幸いなことにブレス系の技は、特にこの空間でも制限を受けていないようで、普段通り使うことはできる。


「ふっ!!」


 飛んでくる魔法を一つ一つ、水で覆って無力化していく。


「なるほど、龍種のブレスは妨害魔法では妨害できないか。良い結果が得られた。」


 そして魔法を全て払いのけ、俺はナルダに向かって問いかける。


「おい、お前……何で女性の体なんだ?」


「ん?くだらない質問だな。そんなことを知って何になる?」


「お前が実験体にしてた男の子が、お前のことをと言っていたんだ。なのに、今は女性の体……違和感を持たないほうが無理だ。」


 そう、マドゥはナルダのことをおじさんと呼んでいた。だからこいつが空間の切れ目から出てきた時、本当にナルダなのか……目を疑ってしまったのだ。


「あぁ……被検体066のことか?アイツは素直で良い実験体だったな。簡単な嘘で騙せる、馬鹿で単純なやつだった。」


 ケタケタと悪びれもなく笑いながら、そう語った奴の姿を見て、俺は確信した。


「わかった、もう喋らなくて良い。」


 マドゥのことを嘲笑うナルダへ、俺は一気に距離を詰めた。


「お前がナルダってクソ野郎なのは良くわかったよ。」


 纏い衣を水から雷へと変化させ、ナルダの顔面に思い切り拳を叩き込んだ。マトモに入ったその一撃は、ナルダの首から上を消し飛ばしてしまう。


 普通なら即死の一撃だったのだが……。


「んん〜、容赦ない一撃……普通なら即死だった。」


 驚くことに、ナルダはなくなった首から上を即座に再生してみせたのだ。


「なっ!?」


「魔法使いには近接戦闘……悪くない選択肢だ。私以外の者にならば通用しただろう。」


 そう話している最中に、俺の頭上に魔法陣が現れた。


「潰れてみるか?」


 クイッと奴が指を動かすと、巨大な質量が俺の体にのしかかってきた。


「ぐうっ……。」


「まだ龍種を押しつぶしたことはないんだ。お前で実験させてもらおう。」


「ぐぐ……実験実験って、人を物みたいに扱うなっ!!」


 龍桜を使って無理矢理体を動かしながら、手をナルダへと翳す。


「サンダーブレス!!」


 俺の手から放たれた極太のサンダーブレスが、ナルダの体を一瞬にして飲み込んだ。

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