カリンが連れてきた人物


 昼食会でエートリヒやシン達と意見交換をしていると、その会場に遅れてカリンがやってきた。彼女はマドゥのほかに一人、フードを深くかぶった人物を連れてやってきたのだ。


「お~い社長よ、そなたに会いたいという者がおったぞ。」


「俺に?」


 彼女たちのところへと歩み寄っていくと、そのフードを深くかぶった人物の招待が判明した。


「……!!お前は……。」


「ひ、久しぶりだな。」


 何とカリンが連れてきたのは、俺と同じ転生者で、現在死の女神の配下になっているあの女性だったのだ。


「ここじゃちょっと場所が悪い。別のところに行こう。」


「わかった。」


 今回も彼女は敵意は無いらしいが……さすがにこの場所で、死の女神の配下の彼女と面と向かって話をするわけにはいかないからな。


 昼食会の会場から場所を変えて、エルフたちがお菓子を売っている場所へと足を運ぶ。


「あ!!ヒイラギ社長、お疲れ様です!!」


 俺たちが顔を見せると、元気よく真っ先に挨拶をしてくれたのはアンネだった。今日はユリの代わりにアンネがこちらで営業を受け持ってくれたのだ。


「アンネもみんなもお疲れ様。ちょっと飲食スペースの一角を借りるよ。」


「は~い!!」


 そして飲食スペースの端っこの方の一角を借りて、彼女と話をすることにした。


「さて、ここならまぁ良いだろう。」


「さ、さっきしゃ、社長って呼ばれてなかったか!?」


 彼女は俺が社長と呼ばれていたことに、ひどく驚いている。


「あれ、言ってなかったっけ?前にハウスキットの中で食べたお菓子にお金を払ったくれたから、てっきり知ってるものだと思ってた。」


「そ、それは……ただ食いするのは失礼だと思ったからで……。」


「ま、話しておくと俺はエルフの国のお菓子を作る会社の社長なんだ。」


「そ、そうだったのか。知らなかった。」


 そんな事を話していると、アンネが気を利かせてお菓子をいくつか持ってきてくれた。


「ヒイラギ社長、お菓子とお茶を持ってきました!!良かったらどうぞ!!」


「あぁ、ありがとう。」


 その光景を眺めていたフードの女は、ポカン……と開いた口が塞がらない様子。普段と違ってめちゃくちゃ隙だらけだから、どら焼きを口に詰め込んでやった。


「んむっ!?ふぁにをふるっ何をするっ!!」


「口がポカーンって空いてたから、食べたいのかなと思ってさ。」


「んぐんぐ……。」


 なんだかんだ言いながらも口に突っ込まれたどら焼きを食べ終えると、彼女はマンドラ茶を口にした。


「ふぐっ!?に、にがぁぃぃぃ……。」


「あぁ、まだ飲んだことなかったっけ?それめちゃくちゃ苦いんだよ。」


 以前と違って、いろいろな表情を見せてくれる彼女は見ていて面白いな。


 そんな事を思いながら、マンドラ茶の苦さに悶絶する彼女を眺めるのだった。

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