ワクチンの効果
厳重な拘束具でガチガチに拘束されて運ばれてきたのは、隷属の腕輪で好き勝手やっていたあの男だった。
拘束具でガチガチに拘束されているものの、何か薬を投与されているようで、まるで抵抗する気配がない。
その男へ、試作品のワクチンを手にした獣人の研究員が近づいていく。
「では、実験を始めてください。」
ジルのその言葉を合図に、研究員はワクチンの入った注射器を男にゆっくりと刺しこむ。そして金色に輝く液体を注入していった。
すると、瞬く間に変化が起こる。
「むっ、男の腕が……。」
異形と化していた男の腕が、徐々に普通の人間の腕へと戻っていったのだ。
「あの男の腕は、確か一度ヒイラギが切り落としたと言っていたな?」
「あぁ、切り落とした方の腕が魔物化してたみたいだが……魔物化が治ったらなんか生えてるな。」
驚くことに、一度俺が切り落としたはずの男の腕が、また綺麗に生えているのだ。
魔物化が治ったことに驚いていたのも束の間、男の意識が急に覚醒し、拘束具の下で暴れ始めたのだ。
「んぐーーーっ!!むーーーっ!!」
その様子を見ていた研究員が、ジルに向かって問いかける。
『口の拘束を外しますか?』
「いえ、その必要はありません。魔物化が治っているのであれば、規定量の鎮静剤で大人しくできるはずです。」
『了解しました。鎮静剤を投与します。』
解けるはずのない拘束から逃れようと暴れている男の首に、研究員は注射器で鎮静剤を投与した。
すると、すぐに男は大人しくなってしまう。
「薬品に対する耐性も、元通りですな。」
サラサラとジルは今の実験結果を記録していく。その最中に、シンがフィースタにあることを問いかけていた。
「フィースタ殿、あの薬はどのぐらい時間をかければ量産できるのだ?」
「量産は今のところ少々難しいです。ですが、製作方法を変える必要はなさそうなので、材料さえあれば、私達の手で一日に三本ほど作ることが可能でしょう。」
「ふむ……一日で三人分か。」
シンが自分の鬣を指で触りながら難しそうな顔をしていると、その隣にいたエートリヒが口を開いた。
「仮にこれからも彼らのように、魔物化させられた人が増えると想定すると……ある程度の数は、まとめて各国に保管しておきたいところですね。」
「うむ。」
「その点は、私達エルフがなんとか研究を重ねて、量産できるようにしてみせます。」
「お願いするぞ、フィースタ殿。」
その後、今回の実験結果を全員で共有した後、集まった全員が王宮へと招かれ、そこで昼食会が行われることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます