魔物化解除ワクチン
神華樹の果実を用いれば、魔物化した人々を元に戻せることが判明すると、エルフの研究者達が早急に神華樹の果実を原料に用いたワクチンの開発に取り組み始めた。
彼女達の研究意欲と技術は凄まじく、僅か三日で試作品第一号となる魔物化解除ワクチンを形にしてみせた。
今日俺は、その試作品第一号を用いた実験に招かれたため、獣人族の国を訪れていた。
「わわ……し、シアちゃんみたいな人がいっぱい。本当に獣人さんの国なんだ。」
キョロキョロとカリンとユリの二人と手を繋ぎながら周りを見渡しているのは、つい先日魔物化から解放されたマドゥだ。
「母上、今日はマドゥを連れてこなくても良かったのではないか?流石に子供には刺激の強すぎるものだと思うぞ。」
「そんな事、言われなくても分かっている。だからこそ、社長とフィースタも呼んだのだ。此方は、マドゥとこの国を観光する故、ユリとフィースタ……そして社長は、アレを見学してくるのだ。」
「かしこまりましたカリン様。」
「良いか、ユリ……。くれぐれも粗相をするなよ?」
「むっ!!は、母上っアタシはもう大人だぞ!?子供扱いは止めてくれ。」
「此方からすれば、マドゥもユリも子供には変わらん。そういうことは、この母と歳が並んでから言うのだな。」
「ぐぐぐ……到底無理なことを。」
ユリが悔しがっている姿を、クツクツと笑いながら眺めるカリン。
「では、マドゥよ。まずは……そうだなボリングとやらに行ってみるか!!」
やや興奮気味で、カリンはマドゥの手を引いて歩き出す。彼女に引っ張られながら、マドゥは必死にユリへと手を振った。
「ゆ、ユリお姉ちゃん行ってきます!!」
「おぉ、楽しんでこいよマドゥ〜。」
すっかりマドゥの姉というのが板についたユリは、そう声をかけながら二人を見送った。
「さ、それでは私達は見学に参りましょう。」
「あぁそうだな。」
フィースタとユリの二人と一緒に、魔物生態調査施設へと足を運ぶと、そこにはすでに各国の重役……そしてエートリヒやシンといった国王までがズラリと揃っていた。
「む!!来たか、ヒイラギ……そしてエルフの方々も良く来てくれた。」
シン達と軽く挨拶を交わすと、俺達が見下ろしている実験室に一人の男が厳重に拘束された状態で運ばれてきた。
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