目覚めたマドゥ


 マドゥはゆっくりと目を開けると、俺達の方へと視線を向けてきた。それにいち早く反応したのはカリンで、すぐに彼のそばに歩み寄った。


「ま、マドゥや、体は大丈夫か?」


「うん、なんともないよ。」


 心配するカリンに、ケロリとした様子でマドゥは答えた。


「ほ、本当か?違和感を感じたりはしてないか?」


「違和感……あ!!いつもよりなんか……体が元気?かも。」


「うむむむ、元気なのは良いことだが……兎にも角にも少々マドゥの体のことを検査したいのだ。」


「僕を検査するの?どんな検査?」


「魔物化についての検査だ。実は昨日の夜……マドゥに食べてもらった果物は、もしかすると魔物化を治せるかもしれない代物なのだ。」


「……じゃあ僕、もう一回魔物化すればいい?」


「無理にとは言わん。だが、一度確かめる必要があるのだ。」


 カリンが頭を下げてお願いすると、マドゥは一つ大きく頷いた。


「わかった。やってみるよ。」


「よ、良いのか?」


「うん、なんか……僕ね大丈夫な気がするんだ!!」


 そしてマドゥは全身にぐっ……と力を入れる。すると、彼の内にある魔力がざわざわとざわめき、どんどん大きく膨らんでいく。


「んーーーっ!!」


 最後の最後に思い切り力を解放すると、マドゥの頭にポン!!と熊のような丸い耳が生えた。


「「え?」」


 思わず俺とカリンはその変化を見て、素っ頓狂な声を上げてしまった。


「え、えっと……やってみたけど。どう?」


「うむ、鏡を見たほうが早いだろう。」


 カリンが近くにあった四角い鏡を手にとって、マドゥに手渡した。すると、自分の今の姿を見たマドゥはクスクスと笑った。


「あはは、何これ!!シアちゃんみたいになってる!!」


 マドゥの感情の起伏に反応して、頭の熊耳がピコピコと動く。


「これはどうなっているのだ?」


「お、俺も良く分からないです。」


「今確実に分かるのは…………とびっきりマドゥが可愛くなってしまったということだけだな!!」


 にへら……とカリンは親バカ全開の笑顔を浮かべながら、マドゥの頭を撫で回していた。


 後ほど、詳しい検査を行ったところ……マドゥの魔物化というスキルが、まるっきり別のものへと変わっていた事が判明した。


 彼が新たに得たスキル……それは(神聖)というものだった。


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