マドゥに取り憑いていたモノ
大して進化したという実感もなく、そのまま朝を迎え、いつもと変わらない一日が始まった。みんなの朝ご飯を作って、洗濯物を干して……と家事を進めていると、コンコンと屋敷の扉がノックされた。
「ん、来たかな。」
玄関の扉を開けると、そこには思った通りカリンが立っていた。
「おはよう社長。」
「おはようございます。マドゥの調子はどうですか?」
「すこぶる良好のようだ。いつもと変わらん安らかな寝顔で今も寝ているぞ。」
「今も……ってことは、ちょっと眠りが深いだけですかね?」
「そうだな。今のところ、それ以外に普段と変わっている様子はない。社長よ、万が一の為此方とともにマドゥを見守ってはくれまいか?」
「良いですよ。すぐ用意してきますね。」
すぐに支度を整えて、俺はカリンとともに彼女の屋敷へと向かう。そしてマドゥが寝ている寝室へと足を踏み入れた。
「まだ目を覚まさぬか。」
ベッドに寝ているマドゥの傍らにカリンは寄り添うと、彼の頭を優しく撫でた。
「ん?なんだこれ。」
俺の目には、マドゥの頭から黒いキノコのようなものが生えているように映っていた。
「何か見えるのか?」
「いや、ここになんかキノコみたいなの生えてませんか?」
「む?此方には何も見えんぞ。」
「…………。」
カリンの目にも見えない。俺にしか見えない黒い何か……。試しに俺が手を伸ばしてみると、近づいてくる手から逃れようと、形が変わった。
「うぅ……。」
「マドゥ!?」
この黒い何かが動くと、マドゥが苦しそうな表情を浮かべたのだ。
「なるほど。よくわかった。」
「社長?」
俺はマドゥの頭から生えている、黒いキノコのようなものを鷲掴みにした。
「マドゥ、ちょっと我慢してくれよ。」
そう一言声をかけてから、俺は一気にその黒いキノコのようなものを引っこ抜く。
「うぐっ!!」
ズルリとそれが一気に抜け落ちると、マドゥの体がビクン!!と大きく跳ねた。
「な、何をしたのだ社長!!」
「マドゥに取り憑いていた何かを消し去りました。」
「なんだと?」
マドゥに取り憑いていた、あの黒いキノコのような何かは引っこ抜かれると同時に、空気に溶けるように消えてしまった。
詰め寄ってくるカリンにどう説明しようかと、頭を悩ませていると、ゆっくりとマドゥが目を開けたのだ。
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