気になる神華樹の味は……


 屋敷に帰ってきて、さっきまで自分が一人で晩酌をしていた場所に座る。


「ふぅ、最初は驚いたけど兎にも角にもマドゥは無事でよかった。」


 カリンの話だと、以前収穫した神華樹の果実を食べたら、少し体が光り、更に収穫したばかりの神華樹を搾ってジュースにして飲ませてみたら、あんなふうになったらしい。


「まだまだこれはわからないことがいっぱいだな。」


 バッグから神華樹の果実を一つ取り出して、それを眺めながらポツリと呟く。


「…………そういえば、みんなはこれを食べたことがあるけど、俺はまだ食べてなかったな。」


 貴重ということもあって、俺は今の今までこの果実を食べていなかった。


「ハウスキットの中の神華樹には、まだ何個か実がなっていたよな。」


 まだストックがあるなら、これ一つ食べても問題はないだろう。


「食べてみるか。」


 多分、何の手間を加えなくても、このままかぶりついて問題はないだろう。


 俺は一つ息を吐いてから、金色に光る林檎のような見た目の神華樹の果実にかぶりついた。


「…………!!」


 神華樹の果実を口にして、驚くべきことがわかった。


「味が……ない?」


 いや、前にシア達が食べたと言っていた時は、確かに美味しかったと言っていたはず。たまたま熟していなかっただけか?


「ん〜、よく分からないな。」


 よく分からないまま、完食すると……頭の中に聞いたことのない声が響いた。


『条件が満たされました。これより種族人間、真名……柊 暮葉のを開始します。』


「は……え?」


 その声が響いた直後、まるで強制的に電源が落とされたように、俺の意識はぶつんと途切れた。






「はっ!?」


 途切れていた意識から急に覚醒し、一気に体を起こすと、ゴツン……と硬い何かに頭がぶつかった。


「はぐぅっ!?」


「いてて……って、イリス?」


 ぶつけたおでこに手を当てながら、周りを確認してみると、すぐ近くに同じくおでこを押さえたイリスがいた。


「お、おはようございます。ヒイラギさん。」


「もしかして俺……イリスにぶつかっちゃったか?ご、ごめんな。」


「いえいえ、大丈夫です。それよりも、おめでとうございます!!」


「進化?あ、そういえばそんなこと言ってたな。……どこか変わったか?」


 自分の体をくまなく確認してみるが、特にこれといって変わっている場所はないようだが。


「外見は変わっていませんけど、確かに進化はしているみたいですよ。ステータスをご覧になってみては?」


「そうだな。それが一番早いな。……。」


 そして自分のステータス画面を開いてみると、とんでもないことになっていた。

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