マドゥに起こった異変


 カリンがオムレツを作れるようになったその日の夜……みんなが寝静まった後で、俺は一人久しぶりに晩酌を楽しんでいた。


「ん……相変わらず芋酒は美味しいな。」


 今飲んでいるのは辛口の芋酒のロックだ。俺の口には、この世界のお酒なら一番口に合う。


「ふぅ。」


 一口飲んでから、おつまみに温めた豆腐にネギや生姜といった薬味を、たっぷりと乗せたおつまみを口にする。


「ん〜、ミクモの作った豆腐はやっぱり美味しいな。」


 ミクモの滑らか豆腐は、口どけが本当に滑らかで豆の甘みもしっかりと感じられる。だからこそ、こういう豆腐を美味しく食べるような料理にはもってこいだ。

 近頃気温が低くなってきたように感じるし、そろそろ湯豆腐なんかをやってもいい頃合いだな。


「この一杯で終わりにしておこうか。」


 ロックグラスに入った芋酒をぐいっと飲み干して、満足感に浸っていると、突然勢い良く屋敷の扉がバタン!!と開いた。


「しゃ、社長!?起きているか!?」


 慌てた様子の声を上げながらドタドタと入ってきたのは、カリンだった。


「ど、どうしました?」


「マドゥに不思議な変化が起こったのだ!!と、兎に角ついて来い!!」


「わ、わかりました。」


 食べ終わった食器などをそのままにして、俺は彼女の後をついていく。そして彼女の屋敷の中へと入ると、そこでは……。


「こ、これはいったい……。」


 カリンの屋敷のリビングにあったのは、金色の繭のような何か。


「しゃ、社長……マドゥはどうなってしまったんだ?」


 繭のようなものに寄り添いながら、心配そうにユリが問いかけてくる。


「これは俺にもわからない。でも……悪い気配は感じないな。」


 何か嫌なことが起こる前兆だったら、背中にべっとりと張り付くような嫌な気配を感じるが……この繭からはそんな気配は感じない。

 それどころか、少し暖かさを感じるような気がする。


 その繭に手を触れてみると、突然パキッ……と繭に横一文字に亀裂が入った。


「あっ!?」


 亀裂はどんどん大きく広がっていって、最終的にパラパラと崩れていってしまった。


「マドゥ!!」


 支えるものを失って、落ちそうになったマドゥをカリンが急いで受け止めた。


「ま……ま?」


「そうだ、ママだ!!分かるか?」


「うん……。」


 カリンの顔を見て安心したような表情を浮かべると、マドゥは寝息をたて始めた。


「いったい何が起こったのだ。」


 一先ずマドゥをベッドに寝かせて、彼が目覚めたら色々と確かめることを彼女と約束し、俺は自分の屋敷へと帰った。



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