同じ料理人として
シン達を連れてあのお店の前まで戻ると、シンは不思議そうに店を眺めていた。
「こんなところにも料理を提供する店があったのだな。」
「所謂隠れた名店ってやつだな。めちゃくちゃ美味しい料理があるぞ。」
「ヒイラギがそこまで言うのなら、よほど美味いのだろうな。」
これから食べる料理を想像したシンは、思わず顔をほころばせる。
「では早速中へ入ろうぞ。」
ゆっくりと扉を開けて、シンは店の中へと入った。
「お邪魔するのだ。」
「へ?い、いらっしゃいませ……ってこここ、国王様!?」
丁度料理を盛り付けていた虎の獣人の店主が、突然のシンの来訪にとても驚いている。
「妾もいるぞ。」
「み、ミクモ様にエルフの方々まで……皆さんどうして私の店に?」
「それは俺が皆を呼んだからだな。」
「勇者様……なぜ私なんかにここまでしてくれるのですか?」
「こんなに美味しい料理を作れる料理人が消えてしまうのは、同じ料理人として見過ごせなくてな。」
そう言うと、店主は今にも涙が溢れそうな目でニコリと笑った。
「ありがとうございます……。」
「さ、そういうわけでみんな分のケーブを頼むよ。とびっきり美味しいやつをな。」
「お任せください!!」
全員にお水を提供した後、彼はさっきまでの何処か悲しそうだった表情とは一変、やる気に満ちた表情で料理を作っていた。
(このお店に入る時……たくさんの人が俺たちのことを目にしていた。それに国王のシンやミクモが入ったお店ともなれば、注目されるのは間違い無い。後は来てくれたお客さんを、料理でどれだけ魅了できるかが勝負になるな。)
そんな事を考えながら、お水を飲んでいると……レイの隣に座ったミクモが、レイに話しかけていた。
「そういえば、クリスタルドラゴン……いやレイよ。お主ら二人きりで歩いておったが、何をしていたのじゃ?」
「そんなの決まっているのじゃ、ツガイのオスとメスが二人きりでいる……それすなわち
「……デートじゃと?」
「そうじゃ〜。主と二人きりで……って、むむ?」
レイはチラリと周りを見渡してみた。
「二人きり……ではないじゃと!?これでは
「こ、この後ちゃんと埋め合わせはするから。なっ?」
ガーン……と音が聞こえそうなほど気分が落ち込んでしまったレイを宥める。
「ぜ、絶対じゃぞ主ぃ。」
「あぁ、約束する。」
「なら構わんのじゃ!!」
「相変わらず気持ちの切り替えは早いのぉ。」
そんな事を話していると、みんなの元へ続々と出来上がったケーブが運ばれてきた。
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