カリンの狙い


 カリンと共に王都へと転移してくると、彼女は大層不機嫌な様子で俺の手を引っぱって、エートリヒがいるであろう王城へと歩く。


「まったく、不愉快……いやそれを遥かに飛び越えて不快だ!!あんな女に親になる資格など存在してはならん。」


「ご尤もですね。……ちなみに今からエートリヒに会って何をするつもりなんです?」


「決まっている。マドゥを養子に引き取るための手続きをするのだ。あんな愚かな親の元へ再び戻すことなど到底できん。ならば此方が養子として養う他ないだろう。」


「なるほど。」


「それと、あの魔物化を元に戻してやる方法も究明してやらねばならんからな。」


 そして二人で王城へと向かって歩いていると、その道中でこの国で営業中だったハリーノ達を見つける。


「む、一国の王に突然会いに行くのに手土産なしは無作法だな。ちょうどいい、あそこで買っていくか。」


 行列の最後尾に並んで、自分たちの番が来るのを待つことにした。すると、それを待っている間にカリンが大きなため息を吐いた。


「はぁ……落ち着いて頭を整理したら、大きな仕事があることに気付いてしまったぞ。」


「大きな仕事?」


「あぁ、マドゥにあの母親のことを伝えねばならん。」


「あ……。」 


「マドゥが自分の母親へ抱いていた僅かな希望を、此方がこの手でへし折ってしまう事になるのだ。」


 これから待ち受ける試練にカリンは頭を抱える。


「一応あの母親の言葉は、一言一句全てこの魔道具に記録してある。とはいえ、これを全てマドゥに聴かせるのは少し気が引けてしまう。」


 真実を伝えることは必要なことだが……まだ子供のマドゥには重すぎる内容だ。


「それなら、マドゥが本当のことを知りたい……って心から望んだら伝えればいいんじゃないですか?」


「それは本当にあの子のためになるだろうか。」


「あれは、年端もいかない子どもが耐えられるような内容じゃないですから。真実を敢えて伝えないのも優しさなのかもしれません。」


「……そうだな。」


 そんな事を話していると、いよいよ俺たちの順番がやって来た。


「いらっしゃいませ~……ってヒイラギ社長にカリン様じゃないですかぁ。」


「お疲れ様ハリーノ。今からこの国の国王に会いに行くから、いくつかお菓子を厳選してくれないか?」


「此方も食う故少し多めに頼むぞ。」


「わかりましたぁ〜。少々お待ち下さいねぇ〜。」


 ハリーノ達にいくつかお菓子を厳選してもらい、それを手土産に俺とカリンはエートリヒのいる王城を目指すのだった。

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