マドゥを養子に迎えるために
手土産を持って王城へと赴くと、すぐに兵士が俺とカリンが来たことをエートリヒに伝えに行ってくれた。
それから間もなく、エートリヒが駆け足でこちらへやって来た。
「急に訪ねてきてすまないな、エートリヒ殿。」
「いえいえ、大丈夫です。どうぞ中へ。」
「感謝する。」
そして王城の応接間へと通されると、早速カリンが話を切り出した。
「突然の来訪を受け入れてくれたこと、感謝する。して、肝心の要件なのだが……実はとある子どもを養子へ迎えたくてな。」
「人間の子どもをですか?」
「うむ。実は訳あって此方が保護している少年でな、この国の捨て子だったのだ。」
「要件はわかりました。しかし、養子となるといくら捨て子とはいえ、その子どもの両親の許諾が必要でして……。」
「母親の証言は取ってきたぞ。吐き気がする言葉を一語一句逃さずこの魔道具に記録してある。」
カリンはマドゥの母親との会話の録音記録をエートリヒへに聴かせた。すると、彼は納得したように頷く。
「ありがとうございます。この音声を聞いた限り、母親に子どもを育てる意思がないと確かに判断できました。後は子どもの出生記録と母親について少しこちらで調べますので、少しお時間をください。」
「その母親は大きな湖のある街でヴラドウルフにボロボロにされているぞ。まぁ、今頃は助けられて治療を受けている頃合いか。」
「湖のある街……シュベールですね。それと、その子どもの名前も教えて頂けますか?」
「マドゥというようだ。」
「ありがとうございます。ではすぐに調べさせます。」
カリンの言葉をスラスラとエートリヒはメモすると、部屋の外にいた兵士にその紙をもたせた。
「確認を急いでくれ。」
「了解しました。」
そして兵士を向かわせると、エートリヒは再びソファーに腰掛ける。
「手間をかけてすまなかったな、感謝するぞエートリヒ殿。」
「手間なんてとんでもない。むしろお礼を言いたいのはこちらの方ですよ。種族の違う人間の子どもを保護して頂いて、本当にありがとうございました。」
逆にエートリヒがカリンに感謝して頭を下げた。
「報告が来るまでまだ時間はありますから、良ければそのマドゥという少年について、お話を聞かせていただけますか?」
「もちろんだ。」
報告が来るまでの間、カリンはマドゥが人間を魔物化させる実験に使われていた子どもだったことなど、マドゥについてエートリヒと情報共有をしていた。
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