何かが行われていた地下室


 隠されていた地下室へと続く階段を、先頭に立って進むと、カビ臭い匂いが鼻を突いた。


「カビの匂いが……。」


「うむ、湿気がこもっている故……奥で何かがカビているのだろう。」


 明かり一つない階段を下り切ると、現れたのは大人一人がやっと通れるような細い一本の通路。その通路にはいくつも扉がある。


「狭い通路にしては部屋がたくさんある。社長、部屋を開けるときは気をつけるのだ。」


「わかってます。」


 危険な気配のする部屋は、奥の方。手前の方からは、特に嫌な気配はしない。


「とりあえず、一つ一つ確認していきますか。」


「うむ。」


 まずは一番手前にある部屋の扉に手をかけて、ゆっくりと開く。すると、そこはガラクタがゴチャゴチャと詰まっているゴミ部屋のような部屋だった。


「何の価値もなさそうな部屋だな。研究に使った廃材がゴチャゴチャと詰まっている。」


 カリンは床に無造作に捨てられている鉱石のようなものを手に取り、ため息混じりに言った。


「何で研究で使ったものだと?」


「これは魔石の原石……属性の魔石へと変化する前の、ただ高密度の魔力の詰まった鉱石だ。もともとは淡く紫色に発光しているのだが……。」


「今はただの石みたいになってますね。」


「そう、これは中の魔力が使われた状態だ。こうなると、その辺の石ころと何ら変わらん。」


 ぽいっとカリンはそれを投げ捨てると、次の部屋を探索するように促してきた。


「ほれ社長、次の部屋に行くぞ。」


「そうですね。」


 そして一つ一つ、安全な部屋から確認していき……何の収穫も得られないまま、遂に危険な気配のする部屋の前まで来てしまった。


「社長、この部屋からはナルダの魔力を感じる。」


「それに、俺の第六感が危険だって言ってますよ。」


「奴が入った部屋だ。きっと何かある。慎重に確かめるぞ。」


 俺は十分に警戒しながら、ゆっくりと扉を開ける。意外にも罠のようなものはなく、あっさりと中へと入れてしまった。


「これは……何かを監禁する檻か?」


 部屋の中には、牢獄のようになっていて、誰かを監禁するための檻がいくつもあった。


「鍵は……空いている」


 カリンは鍵の空いていた檻の中へと足を踏み入れた。そして床に散らばっていた血痕に触れる。


「この血液は、人間?……いや違う、それに近い何かか?」


 カリンが血液を調べていると、部屋の奥の檻で何かが暴れたような音が響いた。

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