閉じ込められていた少年


 物音のした檻の方へと足を進めると、そこには小さな少年が手枷と足枷を着けられて、檻の中に閉じ込められていた。


「子ども?」


 その子どもは、檻の前に立った俺とカリンのことをじっと見つめると、首を傾げた。


「おじさん……じゃない?」


「おじさん?それはナルダのことか?」


 そうカリンが問いかけると、その少年はすくっと立ち上がり、あろう事か手枷を引きちぎってみせたのだ。


「なっ、お前……そこに囚われているわけではなかったのか!?」


「おじさんが言ったんだ……。おじさん以外の人が入ってきたら、って。」


 すると、少年はビキビキと歪な音を立てながら、どんどん人ではないものへと姿を変えていく。まるでいろんな魔物が混ざったような、歪な姿へと少年は変貌を遂げると、檻を力任せにぶち破った。


「オジサンハイッタンダ!!テキヲタオシタラ……オカアサンニ、アワセテクレルッテ!!」


 カリンを踏み潰すように振り下ろされた、ドラゴンのような腕を俺は間一髪受け止めた。


「ぐぐ……なんて力だ。」


「ツブレロォッ!!」


 更に異形へと変わった少年が全体重を乗せてくると、俺の立っている床がバコン……と沈んだ。


「ぐっ、おぉッ!!」


 力を横に流すように何とか逃れると、異形の腕が床を貫いてしまう。


「ニガサナイ!!」


 立て続けに、もう片方の手で俺のことを押しつぶそうとしてくるが……。


「二回目は当たらないぞ。」


 それをするりと躱して、一度カリンの横にバックステップで退いた。


「さて、どうします?」


「異形へと変わってしまったとはいえ、子どもは子ども……何とか救う方法はないものか。」


 カリンは少年を助けるために思考を巡らせる。すると、すぐにあることを思いついた。


「ここがナルダの研究施設だとするならば、何か資料があるやもしれん。社長、此方が探してくる間……時間を稼げるか?」


「やれるだけやってみますよ。」


「うむ、では頼むぞ!!」


 そしてカリンは背を向けて、部屋を出ていこうとする。しかし、それを異形となった少年が見過ごすはずはない。


「マテッ!!」


「お前の相手は俺だよ。」


「ジャマスルナァァァ!!ボクハ……ボクハ、オカアサンニアウンダッ!!」


 そう叫びを上げた瞬間……俺を囲うように多数の魔法陣が出現した。

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