肉弾戦を制する者


 ライオンの巨人は着地と同時に、大地を踏み抜きながら一気に加速して再び襲いかかってくる。


「ガァァァァッ!!」


 瞬発力も凄まじく、空いていた距離が一気に潰される。


 だが、俺にとってはその加速の勢いは、いい獲物にしか過ぎない。


「その勢いもらうぞ。」


 前に突き出されたライオンの巨人の腕をそのまま絡め取り、こっちに突っ込んでくる勢いを利用し、背負って投げる。

 投げられた勢いでさらに加速し、ライオンの巨人は頭から地面に叩き付けられた。


 するとピン……と体が硬直し、ピクリとも動かなくなった。


「お見事だ社長。相手の力を利用するとは、なかなか面白い武術を扱うのだな。」


「俺が戦うところ、見たことありませんでしたっけ?」


「情けなく食われそうになった、ユリを助けた場面ならば拝見したぞ。あのときはスキルを使って倒していただろう?」


「たしかそうでしたね。」


「だからてっきり社長は、スキルを駆使して戦うのかと思っていた。故に、肉弾戦にも強いとは意外だったのだ。」


 そう言ってカリンは笑うと、彼女はふと何かに気が付く。


「んん?社長、そいつの横に何か大きな力を秘めたものが転がっているぞ。」


 ライオンの巨人が埋まっているところをよく見てみると、そこには橙色の宝玉が転がっていた。


「これは……宝玉。」


「宝玉?なんだそれは。」


「実は、これも俺のスキルで倒した魔物から、たまにこうやって宝玉が落ちるんです。」


「ほぅ!!それは興味深いぞ!!」


 パチッと目を開けて、カリンは俺が持っている宝玉に釘付けになった。


「これからは、とても強い生命力を感じるぞ。まるで生きているかのようだ。これは宝石として飾るのか?」


「いえ、これは…………。」


「なんだと!?」


 まさかの使い道にカリンは思わず驚いていた。


「これを食うのか!?本当か!?」


「はい。これを食べると、コイツのステータスとかスキルとかが、全部自分のものになるんです。」


「ふむ……。嘘は一つも言っていない。誠というわけか。」


「そんなに疑問なら試しに食べてみますか?味は保証しかねますけど。」


「良いのか?聞けばそれは貴重なものなのだろう?」


「まぁ、貴重ですけど……その分お世話になってますから。良ければ。」


 そしてカリンに宝玉を差し出すと、彼女はそれを受け取って、じっと見つめたあとに口を大きく開けてかぶりついた。

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