カリンの呼び出し
夕食を食べ終え、お風呂にも入り……すっかりみんなが寝静まった後で、俺はこっそりと屋敷を抜け出してカリンの屋敷へと向かった。
他のエルフ達の家の明かりは消えているというのに、カリンの屋敷からは明かりが漏れていた。
彼女の屋敷の扉をコンコンとノックすると、ゆっくりと扉が開き、カリンが俺を出迎えてくれた。
「待ってたぞ、社長。」
「わざわざ夜遅くに呼び出して……何の用ですか?」
「立って話すことではない、中に入れ。話はそれからだ。」
カリンに腕を掴まれ、強引に中へと引きずり込まれる。そして、カリンの屋敷のリビングのソファーへと座らせられる。
「此方はここに座らせてもらおうか。」
「いっ!?」
何を思ったのか、カリンは俺の太ももの上にちょこんと座り、ニヤニヤと笑いながらこちらを見つめてくる。
「社長をここに呼び出したのには、二つ理由がある。一つは、ナルダについて……もう一つは、エルフの将来について話し合いたかったのだ。」
「それ、こんな風に対面しながら話すことですか?」
「無論大事だぞ?特に二つ目の話には、大いに関わってくる。」
真面目なのか…はたまたふざけているのか、未だに判断がつかない中、カリンは早速一つ目のナルダという魔法使いについてのことを話し始めた。
「実は此方の方で少し、ナルダの痕跡を探ってみたのだ。奴が本当にこの世に存在しているのか、此方自身確証が欲しかったのだ。」
「その結果はどうだったんです?」
「端的に言えば、間違いなく奴はまだこの世に生きている。そして、今何か明確な目的を持って動き始めている……ということもわかった。」
「その目的っていうのは……。」
「生憎此方には見当もつかん。ただ、良からぬことを企んでいるのは間違いなさそうだ。」
またまた雲行きが怪しくなってきたぞ。やっと平和になってきたと思ったのに、数百年前の悪の魔法使いがまた行動を始めて、人間を人では無い何かへと変える危険な物を作っている。
「そのナルダって魔法使いをとっ捕まえることができれば、話が早いんですけどね。」
「奴は強いぞ。あの時代から、今の時代まで……欠かさず魔法の腕を磨き続けているとしたら、きっと今頃はとんでもない魔法使いになっているはずだ。」
普段は強気なカリンが、ナルダのことを話し出すと弱気になっている。それほどに奴は強いということなのだろう。
そのナルダって魔法使いが現れても、みんなのことを守れるように、準備だけは整えておこう。
そう俺は静かに誓ったのだった。
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