ミースからの依頼


 ダンジョンから出ると、そこではミースがこちらを待っていた。


「あ、おかえりなさいヒイラギさん。お怪我はありませんか?」


「大丈夫、この通り無傷だ。ダンジョンの中も特に変わりなかったよ。」


「それなら良かったです。でもほんのりとお顔が赤いような……、」


「あぁ、これはちょっとダンジョンのボスと酒を飲んできたからな。」


「えぇ!?何やってるんですか!!」


 予想してもいなかったであろう、ダンジョンのボスと酒を飲み合ったという、その事実にミースは思わず驚いていた。


「はは、まぁこれはダンジョンのボスに会った人じゃないと分からないさ。」


「そこまで言うなら、今度私もダンジョンにご一緒させてください。私のこの目で、このダンジョンが一体どんなダンジョンなのかを確かめたいので。」


「もちろん構わないぞ。ただ、ボスを見て腰を抜かすんじゃないぞ?外見はめちゃくちゃ怖いからな。」


 バフォメットは友好的な奴だとはいえ、外見は筋骨隆々の羊の頭の化け物だ。ミースが見たら、外見の恐ろしさで腰を抜かしてしまうかもしれない。


「大丈夫ですよ〜、これでも私元金級の冒険者なんですよ?怖い魔物なんて見慣れてますよ。」


「そうだと良いな。」


 今度ミースをバフォメットに会わせた時の反応を楽しみにしておこう。


「さて、今度は俺が冒険者でいられるために、適当な依頼をやらないといけないんだよな?」


「そうです!!今月中にヒイラギさんは何か依頼を完遂しないと、冒険者の資格を剥奪されちゃうんです。」


「適当な依頼で良いんだろ?」


「はい、でもヒイラギさんには是非とも受けてもらいたい依頼を、こちらでご用意しました。」


 満面の笑みでミースはそう言った。


「どんな内容の依頼なのか聞いても?」


「もちろん、良いですよ。」


 すると、ミースは一枚の紙を広げた。


「ヒイラギさんに受けてもらいたい依頼は〜、こちらです!!」


「なになに……エミル樹林に引っ越してきたオークの一団の殲滅。」


 依頼書に書いてあった言葉をそのまま読み上げただけで、どんな依頼なのかを理解することができた。


「なるほどな。つまりオークを全部倒せばいいってわけだ。シンプルだな。」


「一つ気を付けてほしいんですけど、このオークの集団には、それを束ねるオークエリートっていう強い魔物がいるので、それにだけ気を付けてください。」


「わかった。それじゃあ行ってくるよ。」


 冒険者を続けるために、俺は依頼書にサインをしてエミル樹林へと向かうのだった。

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