エルフを襲う魔物


「いったい何なんだ?」


 地面に突き刺さっていたピンク色のものは、凄まじい勢いで森の中へと消えてしまう。


「しゅ、襲撃!?他のみんなにも知らせなきゃ!!」


「何とか俺が食い止めてみるから、行ってくれ。」


「お願いっ!!」


 軽く彼女は地面を蹴ると、他の兵隊エルフへ襲撃を伝えに行った。


「さて、どうするか。」


 姿が見えないなら、気配を探って何とかするしかないな。見えないものの気配を感じ取るために目を閉じると……。


「気配が一つじゃない。何匹もいる。」


 どうやらこの魔物は、一匹ではなく集団で襲いに来たようだ。となれば尚更早くケリをつけなければ。


「悪いが、もう位置は把握した。」


 右手にブリザードブレスを纏わせて、気配の元へ一気に走る。すると、迎撃に先程のピンク色の何かが放たれた。


「ふん。」


 それを右手で掴み取ると、あっという間にパキパキと音を立ててそれが凍りついていく。そしてどうやらこれは本体と繋がっていたらしく、本体をも凍りつかせることに成功した。


「なるほどな。舌で攻撃してきてたってわけか。」


 氷像となることでやっと判明した魔物の正体。それはまるで、カメレオンのような見た目の魔物だった。口から飛び出ている特徴的な長く、鋭い舌を高速で伸ばして攻撃してきていたらしい。


「さて次は……。」


 気配を辿って、次の魔物を討伐に向かう。すると、気配のする方から悲鳴が聞こえてきた。


「っ!!間に合えよ!!」


 全力疾走で悲鳴のした所にたどり着くと、先程仲間へ襲撃を報せに行った彼女が、魔物の舌でぐるぐる巻きにされてしまっていた。


「ぬめぬめで気持ち悪いっ!!離してよ!!」


 不味い、あのままじゃ喰われる。


 咄嗟に足元に落ちていた木の枝を拾い上げ、槍投げの要領で勢いよく投擲する。それは魔物の舌を正確に貫き、そのままの勢いで太い木に突き刺さった。


「ググギャッ!?」


 舌を貫かれた痛みで、魔物が気味の悪い悲鳴を上げる。それと同時に、ぐるぐる巻きに拘束されていた彼女が解放された。


「よっと、大丈夫か?」


 落ちてきた彼女を抱きとめながら、安否を確認する。


「だ、大丈夫……体がちょっとヌルヌルするだけ。」


「それじゃ、ちょっとここに座っててくれ。」


 彼女を座らせて、俺は動けなくなっている魔物へと一気に近付いた。


「サンダーブレス。」


 そしてサンダーブレスで消し炭にする。これで二匹目……残るは後三匹。次なる気配を探っていると……。


「流石だ、社長!!」


「ん?その声は……。」


 声のした方を振り向けば、そこにはカメレオンのような魔物に顔以外を丸呑みにされてしまっているユリの姿があった。


「あ、あの〜だな……良ければ助けてもらえると嬉しい。そ、そろそろ飲み込まれそうなんだ。」


「わかった。動くなよ?」


 ユリを捕食しようとしている魔物の腹部を思い切り蹴り上げると、その反動で彼女は吐き出された。


「おぉ!!」


 粘液まみれの彼女を受け止めながら、魔物へと向かってサンダーブレスを放ち、魔物を仕留めるのだった。

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