古代魔法


 ユリのことを救出すると、兵隊エルフ達を率いて、残りの魔物の首を手にしたカリンが現れた。


「此度は助かったぞ社長。どうして襲撃に気づいたのだ?」


「こいつが教えてくれたんですよ。」


 俺は頭の上に乗っかっていた、メリッサの配下のハチを手で抱えた。


「ふむ……特段気にしてはいなかったが、よくよく見れば随分と不思議な魔物だ。社長の配下なのか?」


「いえ、俺の仲間の配下なんです。」


「つまるところは、社長の監視役というわけか。」


 彼女はまじまじとハチのことを眺めると、ポンポンと頭を撫でた。


「助かったぞ、感謝する。」


 すると、ハチはビシッと敬礼してみせた。


「さて、襲撃によって怪我をした者はいるか?いるならば申し出るのだ。」


 すると、恐る恐るユリが手を挙げた。


「は、母上……実は体がヌルヌルで。」


「ん?よく見れば3人とも、粘液で濡れているな。」


 粘液に気付いたカリンは、パチンと指を鳴らした。すると、体が緑色の光で覆われ、汚れがあっという間に消え去ってしまう。


「この魔法は……。」


 これと同じような魔法を、俺は以前見たことがある。獣人族の国に入った時……イリスが見張りで汚れた俺の体を綺麗にするために使った魔法と酷似している。


「この魔法を知っているとは、社長は魔法の知識も深いのか?」


「いえ、そこまで詳しくはないんですけど……俺の仲間の一人に同じような魔法を使える人がいて。」


「ほぅ、ということはを扱える者がいるということだな。」


「古代魔法?」


 聞いたことのない魔法に首を傾げていると、カリンが説明してくれた。


「古代魔法とは神々が直接この世に生み出した魔法のことだ。効果が強力な反面、扱いが難しい。」


「へぇ……そうなんですね。」


 イリスがそれを使えるのも、今の説明で納得できた。恐らくこの魔法を生み出したのは彼女自身なのだろうな。


「さて、襲撃も収まった故……此方はもう寝るぞ。明日は他種族の王と面会があるのでな。社長も、明日に備えてしっかりと休息を取るのだぞ?」


 そしてカリンは、ユリのことを連れて屋敷へと戻っていった。それじゃあ危険は去ったみたいだから、俺もフィースタの屋敷に戻ろうか。


「それじゃあ、俺はこれで。」


「人間さんありがと〜!!明日もお菓子買いに行くから!!」


 兵隊エルフ達に見送られて、俺はその場を後にした。


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