カリンに報告を


 お風呂場から逃げるように出て、カリンが出てくるのを待っていると、数十分ほど待ってようやく彼女が現れた。


「むはぁ~、やはり風呂は最高だ。社長も一緒に入ればよかったじゃないか。此方が背中を流してやっても良かったのだぞ?」


「そういう冗談はやめてくださいよ。」


「冗談ではないのだがなぁ。」


「まぁ一先ずそれは置いといて、面会の日程が決まりましたよ。」


「誠か、随分早く決まったのだなぁ。」


「たまたま獣人族の国に人間の国王がいたので、同時に話をつけられたんですよ。」


 俺自身、まさかあの時エートリヒが獣人族の国にいるとは思っていなかった。本来なら今日シンに話をつけて、明日にでもエートリヒに話をつけるつもりだったのだが……思わぬ巡り合わせで予定が早まってしまった。


「それはまた運が良かったな。で、日程はいつになった?」


「明後日に決まりましたよ。」


「明後日か……まぁ悪くはない。フィースタも一日ぐらい準備の時間は欲しいだろうからな。」


 そう言ってカリンはソファーに腰掛けると、どこからかマンドラアイスクリームを取り出して食べ始めた。


「んん~♪風呂上がりに食べる冷たい甘味は最高だ。体が喜んでいるようだぞ。」


 体をくねくねとくねらせながら、彼女は風呂上がりの冷たいアイスに舌鼓を打っていた。


「む、そういえば面会には何か土産物を持参した方が良いか?」


「まぁ、あれば印象はよく見えると思いますよ。」


「となれば、やはり持っていくべきは社長の甘味だな。これを持っていけば間違いないだろう。」


「そういうのって、この国の特産品とかのほうがいいんじゃ?」


「何を言うか、これだって立派なこの国の特産品であろう。何せ、この国で採れたものを使っているのだからな。異論は認めぬ。」


 まぁ、カリンがそういうのなら……それでいいのかもしれない。


「そういうわけで、明後日にはどら焼きを……そうだな10個ほど持っていくか。」


「わかりました。準備しておきます。」


「頼んだぞ社長。」


「それじゃあ俺は一度フィースタのところに戻りますね。」


 そして彼女のもとを去ろうとしたとき、不意に彼女に引き留められた。


「あぁ、そうだ社長よ。言い忘れていたのだが……おそらく明日、此方の客人が社長の店を訪れるだろう。」


「客人ですか?」


「あぁ、エルフに変わりはないのだが……少々特殊なエルフでな。まぁ、見ればわかる。」


「はぁ……。」


「ただ扱いには気を付けた方が良い。なかなか好戦的だからな。」


 随分物騒な客人が来るんだな……。忠告通り扱いには細心の注意を払おう。変に喧嘩を吹っ掛けられても嫌だし。それにしても、少々特殊なエルフとはいったいどんなエルフなのだろうか?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る