とんでもない転送場所
エートリヒは部屋に入ってくるなり、こう言った。
「失礼ながら、先程の会話は聞かせてもらった。エルフとの外交……こちらとしては願ってもない案件だ。」
そう言って、彼は俺の正面に座った。
「貴公がどこに行っていたのか……この一月謎だったが、まさかエルフの国へと行っていたとはな。」
「ドーナ達から何も聞いてないんですか?」
「あぁ、だが彼女達は貴公が無事だと確信していたようでね。どこか安心はしていたようだったよ。」
「まぁ、みんなには一応無事なことは伝えていましたから。」
軽くエートリヒと話をすると、早速彼は本題に入った。
「さて、エルフとの面会だったな。まさかまた貴公の手によって、他種族との交流ができるとは……驚きだよ。早速予定を組みたいのだが、向こうはいつが良いとか希望はあるのかね?」
「いえ、特にはそういったことは聞いてません。こちらの予定に合わせてくれると思いますよ。」
「わかった。では、明後日はどうだろう?その日はちょうどシン殿と会う予定があったのだが……。」
「我はその日で構わん。」
「では、そうしましょう。」
二人の話し合いの結果、エルフを交えての面会は明後日に予定された。
「それじゃあ俺は、一度エルフの国に戻ってこの事を伝えてきます。」
そして転送の結晶で戻ろうとすると、エートリヒにある事を問いかけられた。
「彼女達に顔を見せていかないのかね?」
「みんなには、エルフが他の種族にも心をひらいてくれるように尽力するって伝えてるので……その面会が実現したら、顔を見せようかと。」
「……そうか、なるべく心配はかけないようにするのだよ。」
「肝に銘じておきます。それじゃあ……明後日この場所に、エルフを連れてきます。」
そして二人に別れを告げて、俺は転送の結晶を使った。すると、一瞬にして視界が切り替わる。
「む?もう戻ってきたのか社長。」
「いっ!?」
俺が転送されて来た場所は確かにエルフの国だった……しかし、エルフの国の中でも場所がとんでもない所だった。
「なな……なんて所を転送場所にしてるんですか!!」
「他種族への諜報の任に就いていたエルフは、まず体を洗いたくなるものよ。故にこの浴場を転送場所に登録しているのだ。」
俺が転送されてきた場所……それはエルフ達の共用のお風呂場だった。しかもなぜかこの最悪のタイミングでカリンが入浴している。
「社長も体を流していくか?」
「お、俺は大丈夫です。詳しい話は上がったあとでしますから。」
そしてその場から逃げるように、お風呂場を後にするのだった。
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