エルフとの外交へ向けて②


「ウオォォォッ!!ヒイラギよッ、心配したのだぞ!!」


「すまなかっ……うぐっ!!」


 こちらに走ってきたシンは、その勢いのまま俺のことをとんでもない力で抱きしめてくる。


「もう二度とヒイラギの飯が食えなくなるかと思うと……我は不安で夜も眠れなかったぞ!!」


「大袈裟だなぁ、こうやってちゃんと戻ってきただろ?それと……そろそろ背骨が悲鳴を上げてるから、離してくれないか?」


 シンの抱きしめる力が強すぎて、俺の背骨がミシミシと悲鳴を上げている。


「むっ!?す、すまぬ。つい興奮してしまった。」


「いや、突然いなくなった俺が悪いよ。」


「そういえば、今の今までどこに行っておったのだ?」


「ドーナ達から何も聞いてないのか?」


「うむ。」


「そっか、それなら……少し酒を飲みながら話そうか。」


「おぉ!!良いぞ、すぐに用意させる。」


 そしてシンはすぐに芋酒を用意させると、俺と話をするために一室を用意した。


「さて、用意はできた。まずは乾杯といこうか。」


「あぁ、そうだな。」


 シンと乾杯して、一口芋酒を飲んでから、彼は口を開いた。


「して、これまでいったいどこに消えていたのだ?」


「実はエルフの国に行ってたんだ。」


「なんだと!?エルフの国にか!?」


「あぁ。」


 流石にエルフの国に行っていたという事実には、シンも驚きを隠せなかったようだ。


「いったいどうしてエルフの国に行っていたのだ?」


「まぁ、それは話すと長くなるんだが……。」


 シンにエルフの国に滞在することになってしまった経緯を話す。


「ふむ……なるほどな。理解した。して、どうしてまた戻ってこれたのだ?」


「それは、俺がエルフの最長老にシンとエートリヒと会ってほしい……とお願いしたからだ。」


「なに!?」


「俺は、エルフの国に行って彼女達と交流し、少しでも人間っていう種族の悪い印象を変えられるように努力した。その結果……エルフの最長老が、獣人族と人間の国王と一度面会してくれるって約束してくれたんだ。」


「あのエルフを懐柔した……というわけか?」


「まぁ、そうなってしまうのかな。そういうわけで、エルフと面会する機会を設けてほしいんだ。」


「外構の幅が広がることは、こちらとしても望むところである。それに友の頼みであれば断ることはできまい。」


「ありがとう。それじゃあ後は、エートリヒと話をつけてくる。」


「その必要は無い。」


 扉の向こうから聞き覚えのある声が聞こえたかと思えば、エートリヒが入ってきた。

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