ダークエルフ


 翌日、今日の販売当番のアンネと共にお菓子を販売していると、フードを被ったエルフがお菓子を買いにやってきた。


「いらっしゃいませ~!!」


 アンネが眩しい笑顔で接客するが、フードを被ったエルフは何も反応はせず、俺の方に顔を向けてくる。


「なるほど、貴様がこの国に迷い込んだ人間か。」


「え?」


 状況を理解する暇なく、フードを被ったエルフの懐がキラリと光る。


「アンネ、ちょっとごめん。」


 咄嗟にアンネを下がらせて、フードのエルフの手を掴む。


「お客様、困ります。」


「なるほど多少腕は立つようだ。だがそれ故に信用はできない。」


 彼女は俺の腕を振りほどくと、大きく後ろに下がった。すると、その勢いでかぶっていたフードが外れて素顔があらわになる。


「黒い……エルフ?」


 そのエルフの肌は黒く、普通のエルフの真っ白な肌と対になっていた。


「エルフと大まかにまとめても、その中には二種類のエルフがいるのだ。一つは一般的に肌が白いエルフ……そしてもう一つはこのアタシみたいに肌の黒い、。」


「ダークエルフ……。」


「ただ肌の色が違うだけじゃないぞ。アタシ達ダークエルフは、普通のエルフよりも魔力が多い。つまり……強いんだ!!」


 すると彼女は、手にしていた黒塗りの短刀をこちらへと向かって投げつけてくる。


「あっぶないな……俺以外の誰かに当たったらどうするつもりだ?」


「そんな初歩的な過ちは犯さない。」


「いっ!?」


 そして続け様に2本……3本と短刀を投擲してくる。


 背後にはアンネがいるため、避けられないから、その全てを掴み取って無力化するしかない。


「フハハハッ!!防戦一方だな、所詮は人間……口程にもな…………いだっ!?」


 勝ち誇っていたダークエルフの頭に、ゴチン……と生々しい音を響かせて、拳骨が落ちる。


「まったく……ダークエルフであることに誇りを持つことは一向に構わんが、他者に迷惑をかけていることに気付け、このバカ娘。」


 拳骨を落としたのは、他でもないカリンだった。頭にたんこぶを作り、地面をゴロゴロと転がるダークエルフを見て、大きなため息を吐いている。


「バカ娘が迷惑をかけたな社長。」


「い、いやまぁ全然大丈夫でしたけど……それより、このダークエルフの人ってもしかして。」


「その推察で合っている。此方の実の娘のだ。」


 客人ってカリンの実の娘さんだったのか……それならそうと早く言ってくれればよかったのに。

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