カリン来店


 翌日……新作のスイーツであるマンドラアイスクリームとどら焼きを求めて、またしても大量のエルフが屋台に詰めかけていた。


 スイーツを売っていると、突然行列が2列に分かれ、その真ん中をカリンが護衛のエルフを連れて歩いてきた。


「繁盛しているようで何よりだ。聞いたぞ?何やら昨日のどら焼きの他に、新しい甘味を売っていると。」


 氷の魔石で冷やされた、マンドラアイスクリームをまじまじと眺めるカリン。


「ちょうど今日食べてもらおうと思ってた所ですよ。この後フィースタに持って行ってもらおうかと思ってました。」


「んむ、その必要はない。ここで受け取るからな。わざわざ下の者を動かす必要はあるまい。フィースタも忙しいようだしな。」


 そしてカリンはフィースタの方に顔を向けると、彼女へ向かって手を振った。


「フィースタも心なしか、活気に溢れているようにも見える。これもお前という変化が日常に加わった故の変化か。」


 クスリと嬉しそうにカリンは笑うと、本題に戻った。


「おっと、この歳になると我がこの変化一つでさえ嬉しくてな。つい話し込んでしまう。老人の悪い癖だ。」


 ケタケタと愉快そうに笑うと、カリンは注文を始めた。


「さて、ではまず昨日食したどら焼きを……そうだな10個もらおう。」


「どら焼き10個ですね。」


「そのうち一つはすぐにくれ。ここで食べる。」


「わかりました。」


 どら焼きを9個袋に詰めて、1個をカリンに手渡すと、彼女は早速それを食べ始める。すると、とある違いに気がついて食べたどら焼きの断面を確認した。


「これは……か?」


 ハリボックリの実はこの国独自の食材で、簡単に言い表せば……とんでもなくデカい毬栗いがぐりだ。

 俺の知ってる毬栗とは違って、特殊な方法を使わないと、中の実を取り出せないという少々クセのある食材だ。


「流石、気付きましたか。昨日と同じじゃ面白くないと思ったので、今収穫期を迎えてるハリボックリの実を砂糖で甘露煮にしたものを粒あんに加えました。」


「ほぅ!!確かに面白い変化だ。」


 そしてペロリとどら焼きを平らげてしまうと、彼女はマンドラアイスクリームに目を向けた。


「気になっているのはコレだ。名は何という?」


「マンドラアイスクリームです。」


「マンドラアイスクリーム……。マンドラ茶を原料に使っていると聞いたぞ?」


「その通りですよ、この鮮やかな緑色はマンドラ茶の粉末を混ぜ込んでいるおかげなんです。」


「ほぅほぅ、マンドラ茶を甘味にするとは……まず無い発想だ。実に面白い。では早速これもここで一ついただこう。」


「マンドラアイスクリーム一つですね。」


 カップにアイスと粒あんを乗せて、スプーンと共にカリンに手渡した。さて、コレもなかなかエルフ達には好評なのだが……カリンの評価はどうなるだろう。


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