1000年を生きるエルフ


 フィースタと共に彼女の屋敷に帰ってきた後、俺はエルフの最長老だというカリンのことについて、彼女と話をしていた。


「フィースタ、あのカリンって人について少し教えてくれないか?」


「カリン様は、私達全てのエルフの母のような御方です。私も幼い頃からカリン様に愛でられて、ここまで育ちました。」


「……ってことは、あの人はとんでもない年月を生きているってことだよな。」


「ご本人は覚えていないと仰っていますが、文献に残っている限りでは、国が国と成る前から世界樹に住んでいたと。」


「ちなみにそれって何年ぐらい前の話なんだ?」


「約1000年ほど前の事だと……。」


「せ、1000年前!?」


 俺の知っている年長者と言えば、レイやミクモ…そしてバフォメットだが、そんな彼女達を子供扱いできる程だというのか!?


「と、とんでもないな。」


「えぇ。私も形式上は国長という身分ですが……全ての事柄の最終決定権は、カリン様にあるんです。」


「……それなら尚更、あんな約束をあっさりと結んでくれたのは疑問だな。」


 それぐらい責任のある立場なら、あんな無茶な発言は控えると思うんだが……。


「カリン様は他の長老達と違って、新しいこととか珍しいことが好きなんです。きっと、1000年もの間にも食べることのできなかった、珍しい甘味を食べて、あなた様に興味をもったのではないでしょうか?」


「ふむ。」


 どちらにせよ、俺にとって好都合なことに変わりはない。毎日お菓子を届け、更に新しいお菓子で彼女を喜ばせる……。そうすれば言う事を一つ聞いてくれる。


「あの、カリン様に何をお願いするのか……って決まってるんですか?」


「うん、まぁある程度は。」


「参考までに聞かせてもらってもいいですか?」


「あぁ、もし言うことを聞いてくれるってなったら、一度人間の国王と、獣人族の国王と会ってほしい……とお願いするつもりだ。」


 それを聞いたフィースタは、きょとんとした表情を浮かべる。


「こ、この国から出してくれ……ではなくですか?」


「ん?どうしてそんな願いをする必要があるんだ?」


「だって、あなた様は人間ですし、元の国に戻りたいと思うのは当然かと思って……。」


「う〜ん、まぁ確かに帰りたい場所はある。でもそれは人間の国ってわけじゃないんだ。」


 するとフィースタは首を傾げてしまう。


「俺が帰りたい場所は、帰りを待ってくれてる仲間のいるところだ。」


 みんながいるところなら、その場所がどうとかは関係ない。そんな俺の話を、フィースタはうんうん……と大きく頷きながら聞いていた。


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