エルフの信用を得るために
そしてフィースタと共に、魔物がいるという泉へ歩いていく。
「護衛はいらないのか?」
護衛一人つけず、俺の前を歩くフィースタに問いかける。
「あなたには、私たちに対する敵意がありませんから。問題ないと判断したまでです。」
「俺がやられたらどうするんだ?」
「その際は私一人で魔法で逃げますから、ご心配なく。」
そんなことを話している間にも、目先に小さな泉が見えてきた。
「ここが例の魔物の住処です。見たところいないようですが……。」
確かに泉の周辺にはいないようだ……だが、ねっとりと纏わりつくような不気味な気配を、あの泉の中から感じる。
「フィースタ、下がってくれ。」
「え?」
そう言った直後、泉から虎型の魔物が飛び出して、前にいたフィースタへと襲いかかってくる。
「ちょっと失礼。」
「きゃあッ!?」
とっさに反応できなかったフィースタの手を、ぐっと引き、無理矢理下がらせると、魔物の標的が俺へと変わった。
「お前の相手は俺だ。」
剣や弓による攻撃……つまり、物理攻撃は効かないって言ってたが、果たして本当なのか試させてもらおう。
こちらに迫る凶悪な爪の攻撃を躱して、一気に懐を取ると、魔物の顔面に全力の拳を叩き込んだ。
「ん?」
モロにヒットしたは良いものの、手に伝わってきた感覚に違和感を覚えた。
肉を打っている感じじゃない……まるで水を打っているような……。
疑問に思っていると、さっきの一撃で大きく吹き飛んだ魔物が体勢を立て直して、こちらを睨みつけている。
「確かに物理攻撃は効かないみたいだ。それなら……こいつはどうかな?」
俺は全身にサンダーブレスを纏わせる。
「今度はこっちから行くぞ。」
地面を蹴り、一気に魔物へと距離を詰めていく。すると、魔物の体が波打つように蠢いた。その次の瞬間……ヤツの全身から超高圧の水が放たれたのだ。
「っ!!」
変幻自在に軌道を変えて、俺へと向かってくるそれをバックステップで躱す。放たれた水が地面に着弾すると、ジュワジュワ音を立てて地面が溶けていく。
「酸か、またどっかで見たような攻撃だな。」
この攻撃は以前戦ったアシッドスライムを思い出す。当たった時のことを思うと、ゾッとせずにはいられない。
酸による攻撃を全て躱すと、魔物に異変が起こる。
「なんだ?体が膨張して……。」
魔物の体がボコボコと音を立てて、歪に膨らんでいく。
「まさかっ!?」
俺は草むらに隠れて様子を伺っているフィースタへと向かって走る。
「な、なに?どうしたんですか?」
「そこでじっとしてろよ。」
体を龍化させて背中から翼を生やすと、俺はフィースタに覆いかぶさる。
その次の瞬間……魔物が大爆発した。
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