国の重役との会談


 執事服に着替えた後、俺はエートリヒの屋敷のキッチンに立ち、ティーカップに紅茶を注いでいた。


 というのも、着替えている最中に例の重役の人達がここを訪れてしまったのだ。


「一先ず紅茶だけにしようか、ケーキはあの人達の洗脳を解いてから出そう。」


 お盆に紅茶を注いだティーカップと砂糖をのせて、エートリヒが重役達をもてなしている部屋へと向かい、その扉をノックした。


「ちょうどお茶が入ったようですね。入りなさい。」


 入室が許可されたので、部屋の扉を開けてペコリと一礼する。


「失礼します。」


 中に入ると、エートリヒの正面に三人の男性が座っていた。そのうちの一人は筋骨隆々の体躯をしていて、残り二人は平均的な中年男性の体型……そのうちの一人は眼鏡をかけているな。


 そしてその三人の後ろに控えるようにして、ルーカス達が立っていた。紅茶を並べている最中、一人ずつ鑑定でステータスを確かめる。


 ……やはり洗脳状態か。


 三人ともステータスの状態異常の欄に、洗脳と書いてある。だが、筋骨隆々の人だけその横に70%と表示されていた。


 完全に洗脳されているわけではないのか?ならもしかすると、洗脳されていた頃の記憶もあるかもしれないな。


「オーナルフ卿、今日はどのような用件で?」


「えぇ、紅茶も来たことですしご用件をお話ししましょう。」


 一口紅茶を口に含み、エートリヒは言った。


「お三方に国家の転覆にご協力いただきたい。」


 エートリヒがそう言った瞬間、筋骨隆々の男がカッ…と目を見開いて腰に差していた剣を抜き放つ。その剣を、エートリヒの首に届く前に俺が受け止めた。


「むうッ!?」


「少し痛みます。」


 一応そう告げて、彼の腹部に深く拳をめり込ませた。


「ぐっ…ふ。」


 腹部を押さえて彼はドサリと倒れる。もう意識はないだろう。


「バイル殿っ!?」


「くっ、セレナ!!お前達……何をそこで呆けている!!そこの反逆者を殺すのだ!!」


 眼鏡をかけた男が、後ろで待機するルーカス達に声をかけるが、彼らは動かない。なぜならもうこっち側の人間だからな。


「な、なぜ動かない!?私の命令が聞けないのか!!」


「彼らは動きませんよ。」


 あわてふためく男達に、エートリヒは冷たく言い放つ。


「くっ、貴様等謀った……な。」


 残った二人の視線がエートリヒに注がれた瞬間、彼らの後ろに回り込み、首に軽く手刀を当て気絶させた。


「さ、彼らを運びましょう。」


「貴公は相変わらずの手際だな。さっきは助かったよ。」


「いえ、怪我がなくてよかったです。」


 そして三人を以前ルーカス達も寝たベッドへと運んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る