運命を変えた間違い
楽しいと思える時間ほど、時間というものは早く過ぎ去ってしまう。みんなで祭りを楽しんでいたら、あっという間に夕暮れに近づいていた。
「もうこんな時間になったのか。」
そろそろエートリヒの屋敷に向かわないといけないな。
「俺はそろそろエートリヒの屋敷に行かないといけないが、みんなはどうする?」
「シアまだ帰りたくな~い!!」
「わたしも…まだあそびたい。」
「ボクももうちょっと遊びたいなぁ〜。」
シア達三人はまだまだ祭りを楽しみたい様子だ。そんな様子を見てランが言った。
「っていうわけだから、俺達はヒイラギが戻ってくるまで色んなお店を回ってるわ。」
「まだ回ってないお店もあるしねぇ~。」
「じゃあすまないがシア達を頼むぞ?」
二人にシア達の事をお願いして、俺はエートリヒの屋敷へと向かった。彼の屋敷に着き、扉をコンコンとノックする。
「入りたまえよ。」
「では、失礼します。」
扉を開けて中に入ると、エートリヒが屋敷の掃除をしていた。
「掃除……ですか?」
「何せ今から国の重役達が来るからね、少しでも綺麗にしておきたいのだよ。」
パタパタと箒で埃を掃きながら彼は言った。
「こういう時メイドを雇っておけば……とつくづく思うんだが、やはり雇う気にならんのだよ。」
「それは自分がオーナルフではなく、エートリヒであることを隠すためですか?」
「その通り。まぁ、ちょっとした間違いで私がエートリヒであるということを、貴公とあの商人に知られてしまったのだがな。」
苦笑いしながら彼は言う。だが、その間違いがなければ、彼に近づくことはできなかったのも事実だ。
「だが、その間違いも今は正解だったのではないかと思っているのだよ。私の真名を知った貴公が来てくれたからな。」
「そうですか。」
そして彼は掃除を終えて、集めた埃をまとめてゴミ箱へと捨てた。
「さぁ、もうそろそろ重役達が来るぞ?私達も準備をしなければなるまい。」
「準備って……もしかしてまた執事役を?」
「もちろんだ。それともあれかね?メイド服の方がいいかね?」
クツクツと笑いながらエートリヒは冗談を言った。
「い、いえ……執事服でいいです。」
まさか、また執事役をやることになるとは……。まぁ、メイド服を着るよりは遥かにマシか。
大人しく、用意された執事用の燕尾服に袖を通のだった。
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