vsシーデビル
食事をしているシーデビルに近づいていくと、ピタリとシーデビルは食事を止めた。そしてゆっくりと俺の方を向き、血だらけのワニのような口を大きく開けた。
「随分と大きなワニだな。」
シーデビルを一言で言い表すなら凶悪なワニだ。黒くテカテカと光る鱗に、鋭く大きな爪、丸太のような尻尾……そしてあの凶悪な牙が生え揃った大顎。
まさしく全身凶器という言葉がふさわしい。
「俺の方が美味そうだろ?さぁかかってこい。」
慣れ親しんだ構えをとりシーデビルを挑発する。すると、ヤツの姿がだんだん透明になり空気に溶けた。
「カメレオンみたいなもんか。」
あいにく姿が見えない相手の対応は慣れている。目を閉じ集中した。視覚に頼らず、他の感覚器官を総動員してヤツの動きを探る。
「そこかっ!!」
間合いに何かが入ってきたことを感じ取った俺は、即座に後ろに回し蹴りを放つ。足にとてつもなく硬いものが当たると同時に、透明化が解除されたシーデビルが砂浜に転がった。
「本気で蹴ったんだが……傷一つないか。」
蹴られたシーデビルは、何事もなかったかのように体勢を立て直し、こちらに向き直った。
「物理に強いなら、魔法はどうだ?」
物理が効かないなら魔法が効きやすい……と踏んだ俺は右手に雷を纏わせた。
「今度はこっちから行くぞ!!」
砂浜を蹴り、間合いを一気に詰め、雷を纏わせた手刀を振り下ろす。当たる刹那ヤツと俺の間に何かが割り込み、手刀がそれに止められた。
「尻尾か。」
手刀を押し込むがヤツの尻尾はびくともしない。サンダーブレスを纏わせた手刀でも切れないか……とんでもない鱗だな全く。
ヤツが尻尾を振るのに合わせて俺も飛び退き、一旦距離をとった。
「お前のその鱗がどこまで物理攻撃に耐えられるか……試してやる。」
龍桜を使って、体の身体能力を限界まで引き上げる。
「いくぞ。」
再び地面を蹴り、一気にヤツの懐に潜り込む。そして、がら空きの横っ腹に全力でサンダーブレスを纏わせた拳を叩き込んだ。
大きな衝撃音と雷と共、にシーデビルは派手に吹っ飛んでいく。
「手応えアリだ。」
今の一撃は確実に致命傷になる……はずだった。
巻き上がった砂埃の中から、ヤツは再び悠然と姿を現したのだ。
「どんだけタフなんだ?」
ちっとも聞いていない様子のシーデビルに、思わず苦笑いしてしまうのだった。
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