工夫を凝らした一撃


 砂埃の中から悠然と姿を現したシーデビルに、心底驚いた。全身全霊……間違いなく渾身の一撃だったものを喰らって尚平然としている。


「タフなやつだな。」


 シーデビルのとてつもなく高いタフネスに、半ば呆れながら悪態を吐いた。しかし困った……今の攻撃が通らないとなれば、ほぼ全ての攻撃が奴の防御を貫くことができない。


「少し工夫が必要かな。」


 例えば、龍の体の下で発動している散桜を一点に集中させるとか……。ものは試しだ、やってみよう。


「右手に全てを集めるイメージ……。」


 右手を握り締め全ての力を右手に集中させる。淡い桜のような色のオーラが、右手に集中すると赤い椿のように真っ赤に染まっていった。

 凝縮した力が溢れないように、右手の形を更に龍に近づけていく。


「これで……どうだ?」


 直後、シーデビルが大きな口を開けて飛び込んできた。


「正真正銘……コレが俺の最大出力だッ!!」


 目の前に鋭い牙が迫った瞬間、俺は真っ赤なオーラを纏う拳を振り抜いた。その拳は、シーデビルの硬い鱗に覆われた下顎をいとも簡単に貫通し、脳天を貫く。


 シーデビルが即死したのを確認し、突き刺さっていた腕を引き抜く。


「また一つ成長できたな。」

 

 とは言っても、まだまだこの技は改良の余地ありだ。派生もできるだろうし、もっともっと研究が必要だな。


「ヒイラギ~!!」


 戦闘が終わったのを確認して、先程まで岩陰に隠れていたランがこちらに走ってきた。


「怪我はない?大丈夫?」


「あぁ、大丈夫だ。」


 ランに大丈夫であるということを伝えると、彼女はホッ…と胸を撫で下ろした。


「はぁ~、もう見てて凄いヒヤヒヤしたのよ?」


「すまないな、予想以上にこいつが強かったんだ。」


 砂浜に力なく横たわるシーデビルを指差して言った。本当にこいつを白金級の冒険者は討伐できるのだろうか……少なくともセドルでは無理だったろうな。


「だってヒイラギの奥の手の攻撃耐えてたもんね?どんだけタフなのよこいつ……。」


 ランの言うとおり、今までに類を見ないほどタフだった。まぁそのおかげで成長できたのも、また事実。


 こいつには感謝しないとな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る