黒髪の悪魔


 お腹いっぱい昼ご飯を食べて店を出た。


「はぁ〜、美味しかったわね~。」


「あぁ、大満足だな。」


 あのお店は、貝焼き以外の料理もとても美味しかった。是非ともまた来たいな。


「これからはどうするの?」


「そうだな……。」


 今日やるべき事はもう終えてしまった。となれば、あとはあのフードの女に対抗するために、色々とやってみるか。


「フードの女に負けないように、強い魔物でも倒して腕を磨きたいな。」


「あら、いいじゃない?食後の運動よ~。」


「とはいったものの……この辺にどんな魔物がいるかわかんないんだ。」


「ギルドに行ってみたら良いんじゃない?」


「……あのギルドか。」


 あのギルドこそ、出禁になってるんじゃないかな?まぁ行くだけ行ってみようか……。


 大通りを進み、マーレのギルドの前に到着する。


「ん?今日は酒臭くないな。」


 この前来たときは、強烈なアルコールの臭いが外まで臭っていたんだが、今日は全くしない。それに声も全然聞こえない。凄い静かだ。


 この前と違う雰囲気に戸惑いながら、中に入ってみると……。


「ひっ!!」


 俺の顔を見るなり、受付嬢達は机の下に隠れてしまった。


「く、だあぁぁ!!」


 変な名前で呼ばれたかと思えば、ギルドの中で酒を飲んでいた、何名かの男も裏口から逃げ出してしまう。

 そしてギルドの中がシン……と静まり返った。


「ねぇヒイラギ、あなた何かやったの?」


「さぁな、記憶にない。」


 はぁ……と一つため息を吐いて、ゆっくりとした足取りで受付に向かう。そして隠れている受付嬢に声をかけた。


「なぁ、そんなに怖がらなくてもいいんじゃないか?こっちはただ魔物の情報がほしいだけなんだ。」


 そう声をかけるが、一向に机の下から出てくる気配はない。


 時間の無駄だったか。


 踵を返して帰ろうとするとギルドの扉が開き、ふらふらとした足取りで一人の男が入ってきた。顔が赤く染まっていることを見るに、恐らく酒に酔っている。


「んお?なんだぁ?今日は随分と静かだなぁ……。いるのは兄ちゃん達だけか?」


「あぁ、用事があって来たんだが……受付嬢に嫌われたっぽくてな、帰るところだった。」


「ガハハ!!なんだぁサーシャ?ナンパでもされたかぁ?」


 高々と笑いながらその男は受付へと向かう。そして彼が受付にたどり着くと、隠れていた受付嬢が出てきて彼に何かを耳打ちした。


「お?おぉおぉ、そういうことだったか。わかったわかった。」


 受付嬢から何かを聞いた男はこちらへと歩いてきた。


「兄ちゃん、ちょっと上で話聞かせてくれやしねぇか?」


「その前にあんたは何者だ?」


 得体の知れない輩についていく気はない。


「おぉ、俺としたことが自己紹介を忘れてたぜ。俺はギル、このギルドのギルド長だ。」


 こ、この酔っぱらいがギルド長?……ギルド長ってのも色んな人がいるんだな。

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