ランとあの店へ


「貴公はこれからどうするのかね?」


「そうですね、その潮祭までまだ時間はあるようなので、いろいろ準備をしておきます。」


 特にあのフードの女に対抗できるように、準備をしておかなければいけない。


 あのフードの女とは、また本当にどこかで出くわす気がしてならないのだ。敵なのかは定かではないが、何かしら対策はしておかないと、敵だった場合に大きな障害になるのは間違いない。


「そうか、私もできることを処理しておこう。」


「それでは、また後程……。」


 そして俺はエートリヒの屋敷を出た。街を歩いている最中、今日の出来事を頭で整理する。


「ルーカス達が自分の上司である重役達を、ここに呼び出してくれれば、彼ら同様に洗脳のことはなんとかできる。問題は、再び彼らが洗脳される危険があることなんだよな。」


 一応注意喚起はしたが、彼らが何かの拍子にまた洗脳されないとは限らない。そうならないように、今は祈ることしかできない。


 自分でなんとかできないって……すごくもどかしい気持ちになる。

 

 一つ大きくため息を吐き出していると……。


「ねぇ~ヒイラギ~、まだここから出ちゃダメなの?」


「ラン、もう少し待ってくれ。今裏路地に入るから。」


 バッグの中から、待ちくたびれた様子のランが俺に話しかけてきた。この前はドーナと来たから、今回はランが同行人になっていたのだ。


 人気のない裏路地に入り、辺りに人がいないことを確認してランに声をかけた。


「もう出てきて良いぞ。」


「はぁ~っ、ようやく出てこれたわ。この中にいるとお腹すいちゃって仕方ないのよね~。」


「そういえばもうお昼時か。」


 エートリヒ達と話していたら、いつの間にかもう太陽が真上に昇っていた。意外と時間が早く過ぎていたらしい。


「じゃあご飯食べにいきましょ?この前ドーナと行ったところにワタシも行きたいわ。」


「あぁ、あの店か……入れるかな。」


 あの店では一度騒ぎになってしまったからな。出禁になってないといいんだが……。一縷の不安を抱きながら、以前ドーナと来た店の前に来た。

 ドキドキしながら店のドアを開けて中にはいると……。


「いらっしゃいませ~!!あっ!!またいらしてくれたんですね?」


「あ、あぁ…入っても大丈夫か?」


「もちろん大丈夫ですよ~。今ご案内いたしますね。」


 出禁になってなかったことに、ホッと胸を撫で下ろした。


「よかったわね、ヒイラギ。」


「あぁ、全くだ。」


 そして俺とランは、以前ドーナと共に入ったお店で美味しい海の幸を使った料理を楽しんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る