始まりの一手


 新たに協力者に加わった三人に、これからやってもらいたいことを説明した。そしてルーカス達の上司である国の重役も、先程までの彼らと同様に操られている可能性があることもしっかりと伝えた。


「話はわかった。オレ達はあんたと重役達が面会できる機会を作れば良いんだな?」


「そういうことです。できそうですか?」


 俺が直接、重役達と面会することができれば、彼らの洗脳を解くことができる。ルーカス達の話を聞く限り、彼らの遣えている重役は戦争を望むような性格ではなかったという。


 ならば洗脳を解いてやれば、国王に反旗を翻してくれるかもしれない。そうなったら重役の力を借りて、国王が洗脳という卑劣な手段を使っていることを、国民に知らしめてやれば良い。そうすれば国王は終わりだ。


「できそうですかって……やるしかないんだろ?」


「大丈夫だよ、私達がその辺は上手くやるから。」


「そうですか、ならお任せします。」


 彼らならきっとやってくれるだろう。それにいくら洗脳されているとはいえ、重役達も自分の右腕の人物の言葉には耳を貸すはずだ。


「でも、問題は場所ね。王都は避けたいんでしょ?」


「はい、俺が王都に入るとあっちに気がつかれてしまう恐れがあるので……。」


 彼女の言うとおり今回重要になるのは場所だ。重役が何人か集まってもおかしくない場所に来てもらわないといけない。


 これも国王に気取られないためだ。辺鄙な場所に何人もの国の重役が集まっていたら、それはもう誰だって違和感を感じるはずだ。


「それならこの街で問題ないのではないかね?どうせ数日後にはが開かれる。」


「あれって、毎年重役の誰かは来賓で来てたっけ?」


「あぁ、今年の来賓は君達の上司を呼べばよかろう?」


 その潮祭とやらに、来賓として重役が毎年来ているなら何の問題もなさそうだな。


「そうだな、オレはそれで良いと思う。」


「私もさんせ~い。」


「皆は賛成のようだが、貴公はどう思うかね?」


 チラリとエートリヒは、俺の方を向いて問いかけてきた。


「問題ないと思います。」


「では、その方向で動くとしよう。」


 これで最初の行動が決まった。後は計画通りにしっかりと事が進むことを祈るだけだな。


「あ、最後に俺から注意喚起ですが……なるべくあなた方の上司の前では、洗脳されている振りをしてください。あと、国王との会談などの場所には行かないように。」


「わかった。」


「演技には自信あるんだよ~任せて。」


「じゃあさっさと動きましょ。ほらオーナルフ、招待用の書状書いて。」


「あぁ、わかってる。」


 そしてエートリヒは、潮祭の来賓の招待状を三人に持たせた。それを持った三人は、すぐに彼の屋敷を出て王都へと戻っていった。


 後は彼らの活躍を祈るのみ…だ。

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