じゃんけん


「抜け駆けはよくないっす!!」


「そうよ~?こういうのはちゃんと決めないといけないわ。」


「とはいっても、この人数だとコイントスで決めるわけにもいかないしねぇ……。」


 俺を除く全員がこのケーキを欲しがっているため、コイントスで決めるには時間がかかりそうだ。


 となれば、公平にそして簡潔に食べられる人を決めるなら……あの方法が一番良いだろう。


「それならをしたらいいんじゃないか?」


「「「じゃんけん?」」」


「あ~、なるほど……無いんだな。理解した。」


 この世界には、じゃんけんというものが存在していないらしい。ならみんなが知らないのも無理はないな。


「じゃんけんっていうのはな。」


 みんなにじゃんけんという勝負の説明をする。簡単なルールだから、みんなすぐに覚えることができたようだ。


「うむ、理解した。では早速始めようではないか。」


「「「最初はグーッ!!じゃんけん……ポンッ!!」」」


 そして、ケーキをかけたじゃんけんが始まった。この人数だから、しばらくあいこが続くだろう。

 そう思っていた最中、予想とは裏腹に早速敗者が決まったらしい。


「うぅ~……負けちゃったっす~。」


「むぅ、無念だ。」


 グレイスとシンが最初の敗者のようだな。次の機会に頑張ってほしい。


 そして二人が抜けたことによって、あいこの数が少なくなり、続々と脱落者が決まり始めた。


 最終的に残ったのは……。


「メリッサちゃん!!負けないよ!!」


「しあちゃん…わたしも…まけない。」


 運命のイタズラだろうか、今日一番ケーキを楽しみにしていた二人が最後まで残ったのだ。


「いくよ~!!」


「「じゃんけん…ポン!!」」


 そしてシアがグーを出したのに対して、メリッサはパーだった。


「ふふ…わたしの…かち。」


「ふにゃあぁぁ~!!まけちゃったぁ………。」


 最終的に、今回の争奪戦を制したのはメリッサだった。


「おめでとうメリッサ。賞品のケーキだ。」


 メリッサにケーキを手渡すと、メリッサは項垂れていたシアとケーキを交互に見つめて、あるお願いをしてきた。


「ぱぱ…これ…はんぶんに…して?」


「わかった。」


 ナイフでケーキを半分にして、メリッサに差し出すと、メリッサはそれを持ってシアのもとへと向かった。


「はい…しあちゃん。」


「ふぇ?いいの?」


「うん。」


「メリッサちゃぁぁん……ありがとう!!」


 そして二人は仲良くケーキを半分こして食べ始めた。その様子をみんな、暖かい目で見守っていたのだった。

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