おやつの時間


 昼食を済ませた後、シアとメリッサに約束したおやつの時間にすることにした。


「今日のケーキはこれにしよう。」


 俺はバッグから茶色いケーキを取り出して、みんなの前に置いた。


「お兄さん、これなにケーキ?」


「これは、チョコスフレケーキだ。」


 チョコスフレケーキは、生クリームと溶かしたチョコを混ぜたものをゼラチンで固めたケーキだ。


 みんなに行き渡るようにケーキを切り分け、皿にのせていく。そして最後、上からココアパウダーを振りかけて完成だ。


 いざ初めてケーキを見るリリン達は、不思議そうに眺めていた。


「人間って面白いものを作るわよね。これってお菓子なんでしょ?」


「お菓子って……ボク、クッキーしか食べたことないよ。」


「多分食べたら驚くぞ?」


 クッキーも美味しいには美味しいが、まずそれには負けないぐらいこのケーキは美味しい……はずだ。


「ま、それじゃ好きな飲み物を飲みながら自由に食べてくれ。」


「えへへぇ~♪いただきま~す!!」


「いただき…ます。」


 早速シアとメリッサの二人は、フォークで少しケーキを切り分けて口に運んでいた。


「ふわぁ……美味しい〜っ!!ふわふわでトロトロしてて不思議なの!!」


「おいしい…あまくて…ふわふわ。わたし…これすき。」


 二人はケーキに夢中になっていた。後でまた新しいケーキを作っておかないといけないな。


「やっぱりケーキって美味しいわね~♪」


「甘いけど、ちょっとほろ苦くて…くどくないから、いくらでも食べられそうだよ。」


「あぅ……美味しすぎて、もうなくなっちゃったっす~。」


「ふふっ♪ケーキ……これこそ最高の甘味ですね♪」


 ドーナ達もケーキを美味しく食べてくれているようだ。グレイスに至っては、もう皿からケーキが消えていて、もっと食べたそうにしている。


 さて、リリン達はどうなっているだろうか ?


 チラリとリリン達の方に視線を向けると……。


「くっ、なんなのよこれ……こんなに甘くて美味しいものがこの世にあったなんて。」


 リリンは悔しがりながらも、少しずつ……じっくりと味わいながらケーキを食べていた。


 その横にいるライラは、無言であっという間にケーキを食べ終えると、鼻から大きく息を吐きながら、満足そうに口元をナプキンで拭いている。


「あれ?お姉様、あんまり食べる手が進んでないけど……もしかしてお腹いっぱい?じゃあボクが代わりに食べてあげるよ~♪」


「はわわっ!?だ、ダメよ!!これは私のなんだから!!」


 フレイに食べられまいと、リリンは残っていたケーキを一口で口の中に入れてしまった。リリンの頬がリスのように膨らみ、モゴモゴ動いている。


 そんな様子を見て思わず笑みを浮かべていると……。


「ヒイラギ、そのケーキとやら食べぬのか?」


 獲物を見る目で、シンは俺の手がつけられていないケーキを見ていた。シンはグレイス同様、早々にペロリとケーキを平らげてしまっていたから、物足りないのかもしれない。


「俺はもうこのケーキの味はわかってるからな。食べたいならあげるぞ?」


「むっ!?本当か!?では我が……。」


 シンが俺のケーキに手をかけようとすると……。


「「「「ちょっと待った!!」」」」


 他のみんなから、一斉に制止の声がかかった。

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