差し向けられた刺客


 ハチに案内されるがまま着いていくと…。


「クッ、クソがァ…体が動かねぇ。」


「こんなに強い魔物がこの森にいるなんて聞いてねぇぞ。」


 そこにはハチに抱えられた男が二人いた。恐らくはハチの毒か何かで体が麻痺しているのだろう。口と目線以外動く様子がない。

 これなら楽に尋問ができそうだ。


「こんな時間にこの森で何をしているんだ?」


「てめぇがヒイラギかっ!?」


「…………ふんッ!!」


 質問に質問で返してきた男の腹を蹴る。麻痺しているため、守ることもできずモロに俺の蹴りが腹に突き刺さった。


「グェッ!?」


 男はカエルが潰れたような声を出しながら数メートル吹っ飛ぶ。その様子をとなりにいた男が顔を青ざめさせながら見ていた。


「今度はお前に聞く、こんな時間にこの森でなにをしている?」


「……ッ、俺は……。」


「遅い。」


 この男も先ほどの男同様に腹部を蹴りとばす。聞いてすぐに答えられないということは、返答を迷っていたということだ。

 嘘の返答をするべきか、それともホントのことをいうべきか……って。俺が求めているのは真実だけ、それ以外は必要ない。

 呻き声をあげながら地面に転がる男達のもとへと歩みより、再び同じ質問をする。男達の体が反射的に真実を口から述べるまで、俺は腹部を蹴り飛ばしては質問をする……ということを何度も繰り返した。


 すると程なくして、片方の男が根をあげた。


「お、俺らはッ、あんたを殺しに来たんだぁッ!!」


「ゲホッ…グっ、お前なにホントのことをッ。」


 もう片方の男が思わず本当のこと…と言っていたから供述に嘘偽りはないだろう。


「そうか、俺を殺しに来たのか。それじゃあ、誰に命令されて俺を殺しに来た?」


「そ、それは…。」


 二人の男は答えにつまる。まぁ、そんなことはもうわかりきっているようなものだが……。


「言えないか?なら……そうだな、先に真実を答えた方だけ生きてここから返してやる。答えられなかった方には地獄のような苦しみを与えてから殺す。さぁ、どうだ?」


 殺気をむき出しにして選択肢を与えてやると、二人の男は我先にと口を開く。


「「こッ、国王の命令だ!!」」


 二人同時に声をそろえてそう言った。だと。口裏を合わせる時間もなかっただろうし、これが真実なんだろうな。


「二人同時に答えたか、じゃあ御褒美をやろう。」


 俺の言葉に、二人の男の表情に安堵の色が現れる。しかし次の瞬間には絶望に染まることになった。


「メリッサ、ハチってご飯食べてないだろ?」


「うん…たべてない。おなか…ぺこぺこ。」


「あれ、食べていいぞ。もう用は無いから。」


 そう言って俺は二人の男を指差した。その瞬間に男達の顔が絶望に染まっていく。


 誰もこいつらに御褒美をやるとは言ってない。俺が御褒美を与えるのは優秀な働きをしたハチ達だ。


「じゃあ…みんな…よぶ。」


 そして数多の魔法陣から、メリッサが従えているすべてのハチ達が姿を現した。


「みんな…けんか…しないで…たべてね?」


 メリッサからの許しが出た次の瞬間…男達へとハチが一斉に群がった。

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