神域


 二人の後を追ってマジックバッグの中に入ると、そこには俺の知っている光景ではなく、広大な花畑が広がっていた。


「これは……どうなってるんだ?」


 俺が花畑に降り立つと、先に入っていたドーナたちがこちらに駆け寄ってきた。


「ヒイラギ、ここはなんなの?」


「前に入った時とはずいぶん景色が違うみたいだけど…。」


「多分ここは……。」


 憶測で答えようとすると、背後からひょっこりとイリスが現れ、代わりに答えてくれた。


「ここは私が作り出したです。」


「リリンがアタイ達が強くなれる特別な場所って言ってたけど、ここがそうなのかい?」


「はい、この空間は外の世界とは時間の流れが違って。外の世界での一日の時間が、この神域では約一年ほどの時間になるんです。」


「つまり、リリンが言ってた強い奴が来るまでここで強くなれるってことね?」


「そういうことになります。」


 三日間みっちり修行するってなると、三年ほどの時間を使えるってわけだ。こちらとしてはとても都合がいい。


「さて、修行を始める前に……各々目標を定めておこうか。」


「目標って……その強い奴を倒すのが目標じゃないのかい?」


「それはあくまでも最終目標。まずは眼先に捉えられる目標を立てるんだ。この空間にずっといられるわけじゃないから、一度入って…次に出るまでに達成できる目標を…。」


 そう言うと、ドーナとランの二人は頭を悩ませ始める。


「ヒイラギさんはどんな目標を立てるんですか?」


「俺か……俺は………。」


 目標を考え出すと、ふと脳裏に師匠が残していった言葉がよみがえる。


。私の夢はこれを完成させること。』


「散桜を……完成させる。この世界なら…今の俺ならきっとできる。」


 そして俺が目標を定めると、ドーナとランの二人もお互いに共通の目標を立てたようだ。


「ヒイラギ、ワタシ達は…。」


「ヒイラギが倒したっていうカオスドラゴンを倒せるように、頑張るよ。」


「あぁ、頑張ろう。」


 そして全員が目標を定めたところで、イリスはにこりと笑うと、パンパンと手を叩いた。


「それでは、目標を達成できるよう……私もお手伝いさせていただきますね♪」


 イリスのその言葉とほぼ同時……俺たちの目の前に二つの魔法陣が出現した。

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