イリスの秘策


「リリン、ちなみに猶予は何日ぐらいあるんだ?」


「3日ってところだと思うわ。」


 3日……そんな短い期間で、二人を強くして俺自身も強くならなきゃいけない。


 む、無理だ……時間が足らなすぎる。


 絶望していると、今の今まで沈黙を貫いていたイリスが満面の笑みでこちらに微笑みかけてきた。


「ヒイラギさん。時間でしたら私が助けになれますよ?」


「本当か?」


「はい、以前シュベールの教会でお祈りをしたときのことを覚えていますか?」


 教会でお祈りしたとき……あの時はイリスとメルと話をして、お茶を飲んで………。


「……あ!」


「お気づきのようですね?神域では下界と違って時の流れが違います。」


 確かにあの後ドーナ達と合流した時、こちらの世界ではほぼ時間が経っていなかった。


「つまりあの空間であれば……。」


「いくらでも時間がある…ということです♪」


 それならなんとかなるかもしれない。時間という大きな問題を解決できたのは、かなりデカイ。


 希望を見出していると、先程からイリスの言動に首を傾げている人物がいた。


「ねぇヒイラギ、そういえばなんだけどその人何者なの?神域とか下界とかって言ってるけど。」


「あぁ、そういえば二人には紹介してなかったな。」


 聞いたら驚くんだろうな……。


「ふふっ♪リリンさん、シンさん、自己紹介が遅れてしまいました。私の名はイリス‥転生を司るです。」


「はっ!?女神!?なんでここにいるのよ!?」


「ヒイラギさんとはちょっとした御縁がありまして、共に行動させてもらってます。」


 あんぐりと口を開けて固まっているリリンとシンの二人。


「ヒイラギ……あなた本当に何者なの?」


「ただの料理人だ。」


 正確に言えば、こことは違う世界からやって来た…ただの料理人と言うべきかな?

 まぁどっちでもいいだろう。


 そう割り切っていたのだが……。


「絶対ウソ。」


「うむ、ウソだな。」


(……そ、そんな二人して嘘って言わなくても。)


 ただの料理人ということを否定され、少し落ち込むヒイラギだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る