シンの実力と巧妙な罠


 土埃の中から姿を現したシンは少し表情をしかめていた。


「むう、今のをかわすか。」


「まぁな。躱す流すってのは俺の専売特許なんだ。」


「並の剣技では当たらんか…悪いが少し小細工させてもらうぞ!!」


 するとシンは剣に魔力を込め始めた。


「飛剣一閃!!」


 ブンと空気を切り裂きながら、シンは大剣を横に凪いだ。すると実体化した斬擊が俺に向かって飛んでくる。


「なるほど、そう来たか。」


 受け流すのは厳しいと判断し、ジャンプして斬擊をかわした。そしてシンを見るとニヤリと笑いこちらを見ていた。

 どうやらこの状況を作りたかったらしい。滞空している俺に彼はここぞとばかりに大量の斬擊を繰り出してくる。


「纏い衣……雷。」


 腕に纏わせる要領で、右手の短剣にサンダーブレスを纏わせて飛んできた斬擊に短剣を振り下ろした。切れ味はこちらの方が上だったようで、シンの斬擊は真っ二つに切られ空中に霧散した。


 よし、これならいける。こちらに向かって放たれたシンの斬擊を切り裂きながら着地する。


 すると、シンは俺が着地した瞬間を見計らって一気に距離をつめてきた。


「フンッ!!」


 逆袈裟に大剣を振り下ろしてくる。その大剣の腹を掌底で打つと、あっさりと剣はシンの手を離れ宙に舞った。


「なんのッ!!」


 武器を失くしたシンはすぐさま肉弾戦に切り替えた。剣術もかなりの腕だが、こっちの方もかなりやるようだ。

 繰り出される技はどれも無駄がなくしっかりと型にはまっている。


「受けてみよ!!牙王波ァ!!」


 シンは両の掌を合わせた。するとそこにバチバチと高濃度の魔力の球体が作られ始め、彼が両手を前に出すと同時にその魔力の塊は俺に向かって放たれた。


「これ邪魔だ。」


 短剣を空へと放り投げ、とっさに両手を前に出しその球体を受け止めた。


「おぉっ!!」


 全力で受け止めているのにその勢いは衰えず、それどころかどんどん強くなっている。すごい技を持っているんだな。


「ふんっ!!」


 いつまで経っても衰える気配のないそれを空へと向かって受け流すと、眼前に大剣を振るおうとしているシンが飛び込んできた。


「今度は我の勝ちだな!!」


 体勢の整っていない俺へと勝利宣言しながらシンは大剣を振るってくる。絶望的な状況だが、この状況は俺の作り出したものだ。


「ホントにそうかな?」


「なにっ!?」


 シンの剣が俺に触れる刹那、シュルルルル……と空から先ほど投げた短剣が落ちてきてシンの首を直撃した。

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