盟約の破壊


 リリンとともに部屋の中に入ると、大きなベッドの上で横になっていた銀髪の少女と目が合った。


「お姉さま、その人は?」


「貴女を縛っている盟約を消し去ってくれるかもしれない人よ。大丈夫、しっかり盟約を結んだから貴女に危害は及ばないわ。」


「初めまして、ヒイラギだ。」


 軽く自己紹介すると、彼女は不安そうな表情で問いかけてきた。


「本当に大丈夫なの?その辺の盟約とはわけが違うんだよ?もし失敗したらあなただって、きっと無事じゃ済まない。」


「大丈夫だ、絶対に解除してみせる。」


「……そっか、そこまで言うなら……。ほら、いつでもいいよ。」


 そう言って彼女は大の字に体を広げた。


「ありがとう。じゃあ始めるぞ。」


 死の女神への憎しみ、怒りを糧にブレスオブディザスターを体に纏わせる。それによって現れた黒いオーラは、リリンの妹に繋がっている普段は見えない太い鎖を可視化させた。


 少し触れてみるとバチッと弾かれてしまう。とてつもなく強い力が込められているようだ。


 強い力には……強い力で真っ向から対抗してやる。


 数多くの宝玉を体に取り込んだことで、大きく上昇した魔力をすべてブレスオブディザスターへと注ぐ。


「これでどうだッ!!」


 リリンの妹を繋いでいる鎖を握りしめると、俺の体を伝って黒いオーラが鎖を覆っていく。黒いオーラが体から離れていくと、自分の魔力が急速に減っていくのがわかる。


 黒いオーラが鎖を蝕み始めると、ビキッ……と鎖にヒビが入る。


「まだ……だっ。」


 一滴も……残さず注ぎ込めッ!!


 余すことなく俺のすべてを注ぎ込んだと同時、バキンと鎖が千切れ、虚空に消えていく。


「い、いけた……かな?」


 ホッと一息つく間もなく、ズキンと頭が割れるようなとてつもない痛みが襲いかかってきた。


「ぐっ……頭が、割れる。」


 足元もおぼつかなくなり、床に前のめりに倒れ込んだ。


「ちょ、大丈夫なの!?」


 倒れた体をリリンが起こしてくれたが、すでに俺の意識は遠ざかりつつある。体を支えてくれているリリンへと俺は言葉を絞り出した。


「や、約束は守ったからな。」


 その言葉を絞り出した直後、俺の意識はブツンと途切れて消えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る