記憶喪失
目を覚ますと俺は大きなベッドの上に寝かされていた。
「いったい何が……。」
シアが連れ去られて……王宮を飛び出したことは覚えてる。それ以降の記憶が、ぷっつりと切れてしまったかのように消えてしまっているのだ。
きょろきょろと周りを見渡すと、隣でもぞもぞと動くものがいた。毛布をめくって姿を見てみると……。
「んにゅぅ~、お兄さんおはよ……。」
「シア!!連れ去られたはずじゃ…。」
シアの体をよく見てみるが怪我などは見受けられない。状況が理解できずにいると部屋のドアが開き一人の少女が入ってきた。
「気が付いたようね。」
「……誰だ?」
俺が問いかけると、彼女は少し驚いたような顔を浮かべて言った。
「覚えてないの?……魔力を過剰に使ったからかしら。まぁいいわ、順を追って説明してあげる。」
そしてその少女から、失っている記憶の一部が語られた。語られたことをもとに思い返そうとしても、記憶に霞がかかってしまったようで、思い出せない。
「じゃ、じゃあお前が本当に吸血鬼……リリンなのか?」
「そうよ、改めて初めましてね。」
驚くべきことに、俺に説明をしてくれたこの少女こそ、吸血鬼リリンだというのだ。状況がまったくの見込めずに困惑していると……。
「記憶を失って困惑しているところ悪いんだけど、フレイがとてもあなたのことを心配していたから、一度顔を見せに行ってあげてくれない?」
リリンが俺の顔を覗き込みながら言った。
フレイ……俺が意識がない内に救ったというリリンの妹らしい。リリンの話では確か死の女神の強制盟約ってやつで今まで人質に取られてたとか…。
「記憶がない状態で会いに行って大丈夫か?」
「心配ないわ、記憶がなくてもフレイがあなたに救われたことは事実だし。何の問題もないわよ。」
「……そうか、わかった。会ってみよう。」
「その気になってくれて助かるわ、きっとフレイも喜ぶから。それじゃあついてきて。」
いまだ現状が呑み込めていないが、一先ずそのリリンの妹であるフレイに会いに向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます