リリンとの取引
その部屋の前でリリンが出てくるのを待った。大きな賭けだが、これに勝てればこれからの情勢が大きく変わる。
話し声が聞こえなくなった部屋から、すっかり落ち込んだ様子のリリンが出てきた。
さっきは姿を見ることはできなかったが……リリンは金色の長い長髪をツインテールに結んでいる、ゴシックな服に身を包んだ幼い見た目の少女だった。
彼女は大きくため息を吐くと、気持ちを切り替えたのか顔を上げた。すると、俺とばっちり目が合ってしまう。
「ななっ、何であなたがここにいるの!?さっき確かに殺したはず……。」
「俺自身死んだと思ったよ。でも生きてる、これが事実だ。」
驚きを隠せないでいる彼女に俺は続けて言った。
「さっき少しだけ話を聞かせてもらった。妹のために死の女神に服従しているんだな?」
「それがなんだって言うのよ?今の私はあなたの敵、獣人族を滅ぼすことが私の使命よ!!」
今にも襲い掛かってきそうな彼女に、俺は冷静に意見を述べた。
「これはあくまでも俺の意見だが……他人の妹を人質に取る狡猾なヤツが素直に約束を守るとは思えない。多分、獣人族を滅ぼしたら妹は解放するとか言われてるんじゃないか?」
「っ、何でそれを。」
「もし俺が敵の立場だったらそうするからだ。さらに言ってしまえば、そんな約束なんて守らずお前が死ぬまで使い潰すだろう。」
残酷な現実だが、一度弱味を握られた者は一生絞られ続ける。それが世の中の常というものだ。
「じゃあどうすればいいってのよ!!」
やけになったリリンは叫んだ。悲痛な胸の内が伝わるような心の奥底からの叫びだ。
「そこでだ、もし俺が死の女神の強制盟約とやらを解除できるかもしれないと言ったらどうする?」
「藁にもすがりたい思いではあるけどね、私はあなたごときにあれが解けるとは思えないわ。」
「そうか、ならこうしよう。もし強制盟約ってやつを解除できなかったら……その場で俺を殺しても構わない。もう復活する手段は持ち合わせてないから、蘇る心配もないぞ。」
その言葉にリリンは驚愕し、言葉につまるが……少し悩んだ後に渋々頷いた。
「……わかったわ。そこまで言うあなたの覚悟に免じてやらせてあげる。ただし、変な気を起こされたら敵わないわ。私と盟約を結んでもらうわよ。」
「構わない。」
俺が頷いた瞬間にリリンとの間に繋がりができたのを感じた。これが盟約というやつなのだろう。
「盟約成立ね。もしあなたがフレイに危害を加えようとしたら盟約に殺されるから。肝に銘じておきなさい。」
「わかった。じゃあ早速やってみよう。」
そして俺はリリンとともに、彼女の妹がいる部屋へと足を踏み入れるのだった。
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