魔物が湧き出す森の中


 出発してから三時間ほど……俺達は今森を走り抜けていた。全力で駆け抜けるため、シアとグレイスはマジックバッグの中に入ってもらっている。


「この森に入ってから、急に魔物が多くなってきたな。」


 走っている俺に飛びかかってきた、虎のような魔物をサンダーブレスで消し飛ばしながら言った。


「そろそろ近づいてきたのかしら?」


「この辺も全然人の気配はしないけどねぇ。」


 きっと近づいてきているはずだ。魔物もだんだんと強くなってきたし、何より数が多い。この森に入ってから急に魔物が増え始めた。


「この森……なんか嫌な感じがする。」


 その嫌な予感は二人も感じていたらしく……。


「な~んかあっちの方から嫌な魔力の流れを感じるのよねぇ。」


「うん、アタイも感じる。」


「……確認してみるか。」


 警戒を強めながら、その嫌な感じの魔力が放出されている場所へと向かった。すると見えてきたのは……。


「これは……なんだ?」


「凄い魔力の結晶だねぇ。この嫌な感じの魔力の源はこいつってわけかい。」


 目の前に浮かぶ怪しい紫色の光を放つ大きな結晶。ドーナ曰く魔力の結晶というやつらしい。


 少し観察していると突然結晶が輝きだし、その光の中から複数の魔物が生まれてきた。


「そういうことか!!」


 新たに生まれた魔物を蹴散らして結晶の前に立つ。


「フンッ!!」


 全力で魔力の結晶を殴りつけると、それは粉々に砕け散った。


「いっ……ててて、めっちゃ硬かった。」


 今まで打ってきたものの中で一番硬かったかもしれない。


「一応この欠片は拾っておこう。イリスに聞けば何かわかるかもしれない。」


 砕け散った欠片を少し拾い集め、俺たちは再び歩みを進めるのだった。 

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