Win-Winな関係


 そう本題を切り出すと、ミルタさんは少し目を細めた。


「理由をお聞きしても?」


「実はこの世界にある美味しいものを求めて旅をしているのですが……どうしても希少価値の高いものは手に入らないかもしれない。ですが、なかなか諦められない質のもので何としても手に入れたいんです。」


 食材のなかには極めて希少価値が高いものがあったりする。そういうものはなかなか普通の流通ルートでは手に入らないのだ。


 だからこそ、独自の流通ルートを持っているミルタさんの商会の力を借りたい。


 俺が心の内をミルタさんに打ち明けると、彼はすぐに一つ頷いた。


「なるほど、そういうことでしたらもちろん構いません。」


「ずいぶん決断が早いですね。」


「実はその話はこちらにとってもかなり利益の出るお話でして、希少価値の高いものは売れることは売れます。しかし大半はその値段故に売れ残ってしまうことが多いのですよ。」


 彼の話は至極もっともだ。希少価値があるゆえにそういう物は値段が跳ね上がり手の届かないものになりがち。


「つまりこちらの要望はミルタさんにとって都合がいい…と?」


「えぇ、お互いに都合が良い取引になると思っております。」


「それじゃあこれからよろしくお願いします。」


「えぇ、私の商会の力でヒイラギさんの旅の援助をさせていただきます。」


 お互いに握手をかわし、取引は成立した。よし、これで大きく一歩前進できたぞ。


「それではよい商談もできたので……今日はこの辺で失礼します。紅茶ありがとうございました。」


「もう行ってしまわれるのですか?」


「えぇ、そろそろお昼時ですから。あ、あとこれ今回の商談を受けてくれたお礼です。」


 俺はマジックバッグの中から、以前市場で購入したベリリの実をふんだんに使ったケーキを取り出した。


 それを見たミルタさんが驚いた表情を浮かべた。


「こ、これはいったい何ですかな?」


「これはベリリの実を使ったというお菓子です。さっきの紅茶と合わせて食べると美味しいですよ。」


「見たことがないお菓子ですな、ありがたくいただきますぞ。」


 最後、ミルタさんの店を後にする際に彼は店の前まで見送りに来てくれた。


「もし次の街に着いたら手紙でこちらから連絡しますね。」


「わかりました。ではその時までに眼鏡にかなう物を仕入れておきますのでご期待ください。」


 最後にミルタさんにお礼を言って、俺たちは彼の店を後にしたのだった。

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