取引
ゴールデンティップスのみの紅茶を一口口に含んだ瞬間……今までの紅茶を覆す衝撃が体中を駆け巡った。
(これはとんでもないな。香りが普通の紅茶とは段違いだ。口に含む前からとても良い香りがしていたが、実際に飲んでみると茶葉の芳醇な香りが鼻を通っていく。次に味…ゴールデンティップスの甘味特有の甘みが飲みやすさを際立たせている。)
ごくっと飲み干すと、反射的にため息がでてしまう。
「ふぅ……。」
そんな満足した溜息を吐いたこちらの様子を眺め、ミルタさんは誇らしげに語り始めた。
「この紅茶は商会の自慢の品でして、ゴールデンティップスのみで作られているのでそれなりに値は張りますが……良い風味と味が特徴なんですよ。」
「えぇ、とても良い香りを楽しませて貰いました。こんなに上質な紅茶は飲んだことありません。」
ドーナとランも紅茶の美味しさに目を見開いていた。ハウスキットの中にあるのはインスタントだから、この紅茶とは比べられたもんじゃない。
一方シアはというと……。
「んべえぇ~……ひ、ひたがきゅ~ってにゃったぁ。」
「流石にまだシアには早かったか。」
シアは舌をベーっと出して紅茶特有の味に戸惑っていた。
「こ、これはこれは…私としたことが別なものを持ってこさせましょう。」
ミルタさんが手元のベルを鳴らすと、すぐにトントン……と扉がノックされさっきの女性が入ってきた。
「新鮮な果実の果汁を1つ用意してください。」
「かしこまりました。」
彼女は一度退室すると、すぐにグラスいっぱいに注がれた飲み物を携えて戻ってきた。
「お待たせいたしました。アプルの実の果汁です。」
そしてシアの前にその搾りたてのジュースを置くと、こちらに向かって一礼した。
「失礼致します。」
「すみませんありがとうございます。」
「いえいえ、私の配慮が足りなかっただけですので。」
「おじさんありがとう!!」
シアはミルタさんにお礼を言うとジュースを飲み始めた。
「この年でちゃんとお礼が言えるとは良い教育をされておりますな。」
「いえ、教育と呼べるものはほとんどしてません。シアはもともと礼儀正しくて、とても良い子なんですよ。」
美味しそうにジュースを飲むシアの頭を撫でながらそう言った。実際そういう事は何一つ教えていない。もとからシアはできていたからな。
「それでミルタさん、実は1つお願いがあるのですが……。」
「おぉ、それはいったいどんな用件ですかな?」
俺がそう切り出すと、ミルタさんの目は一瞬で商人の目に変わった。この切り換えの早さは流石としか言いようがないな。
「ミルタさんの商会では各地の食品も取り扱っていますよね?」
「えぇ、各地の陶芸品や食材などなど……多種多様な物を扱っております。」
「もし、とても珍しい……もしくは希少価値がとても高い食材が入ったら優先的に俺に声をかけて頂きたいんですが、どうでしょうか?」
いよいよ俺はミルタさんに本題を切り出した。
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